五大陸の言語をサポートするドリームチーム。11名の仲間たちでカバーするのは20言語以上

8ヵ国を話すマルチリンガル・新条正恵が、2016年リオ五輪に通訳ボランティアとして参加。4年後の東京大会でボランティアでの参加を考えている人たちのために、五輪ボランティアの仕事について現場から日々の様子をレポートする。第11回は、ブラジルでは馴染みのないボランティア文化について。

なぜタダで働くの?そんなの考えられない

 リオ2016のボランティアの制服を来て街を歩いていると、とにかく人によく話しかけられる。開幕1週間も過ぎた頃、ボランティア仲間のクリスティアーニが街で聞いたという、感動のストーリーを話してくれた。

 リオ生まれのクリスティアーニは6年間オランダに住んだ後、2015年9月にブラジルに帰国。「ブラジルのためにも絶対ボランティアしたい!」とリオ2016への参加を決めた。

 ところがブラジルではボランティア文化が根付いていないこともあり、周りの協力は少なかったそうだ。プロジェクトマネージャーとして働く職場でも「なぜタダで働くの?そんなの考えられない」と反対の声が多く、休暇を取ることを断念。担当していたプロジェクトを3週間早く納品し、仕事を辞めてからボランティアに参加した。

 ある日のこと彼女が出勤する際、電車の駅で、黄緑色の服を着た駅の案内係に、英語で話しかけられた。「May I help you?」(何かお手伝いできることはありますか?)

 彼女がブラジル人で、ポルトガル語で話せることを伝えると、相手から「ありがとう」と言われたという。なにが「ありがとう」なのか。彼女は理由を尋ねた。

 実は、この駅の案内係も大会前、「お金をもらってできる仕事もあるのに、わざわざボランティアをするなんて、バカらしい」と有償の仕事を探し、この駅で案内係の仕事につくことにしたそうだ。