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パソコンはオワコン?を覆して
黒字化したVAIO社の生きる道(上)

――長野県安曇野市の最新鋭工場を見る

大河原克行
【第122回】 2016年8月26日
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大きな話題を呼んだ
「ふるさと納税PC」

「ふるさと納税」の返礼品にVAIOのPCを選んだ経緯などを話す、安曇野市の宮澤宗弘市長

 VAIOの市場からの高い評価を裏付ける出来事として、安曇野市が、ふるさと納税への返礼品としてVAIOを用意したエピソードがあげられる。

 安曇野市・宮澤宗弘市長は、「2015年6月に発表したところ、一晩で160台もの申し込みがあり、予想以上の大反響に驚いた。2015年度では、1591台ものVAIOの申し込みがあった。2016年度は現時点で420台の申し込みがある」とする。それまでは600万円前後で推移していた同市へのふるさと納税額は一気に拡大したという。

 そして、VAIOが取り組んでいる受託事業においても、安曇野工場の資産は大きな威力を発揮している。

かつて大人気を博した「AIBO」も同工場で生産されていた

 かつての長野テックでは、ソニーが開発していた犬型ロボット「AIBO」を生産していた経緯がある。

 AIBOは、1999年にソニーが発売したロボットで、2006年の生産終了までに15万台を出荷。2014年春にサポートを終了した。生産終了からは10年の歳月があるが、ロボットの開発、生産に関する主要な技術は継続し、PC生産にも応用。さらに、2014年までAIBOのサポートを続けてきたことも、ロボットが持つメカやサーボのノウハウを伝承できる環境を維持することに繋がっているという。

 ソニー時代には、ロボットに関しては、外部からの受託生産を行わなかったが、VAIOでは、これを新規事業として展開。すでに、富士ソフトのコミュニケーションロボット「Palmi(パルミー)」や、Moffのウェアラブルデバイス「MoffBand」、AKA LLCの英語学習AIロボット「Muscio(ミュージオ)」、テラダ・ミュージック・スコアの2画面電子ペーパー楽譜専用端末「GVIDO(グイド)」などを受託し、実績があがっている。

 VAIOの今井透執行役員専務は、「これまでやってきたモノづくりには、強い自負がある。PCだけでなく、ロボティクス、IoTにおいても同じ自負を持っている」と語る。今井執行役員専務は、ソニー時代にAIBOの生産にも携わってきた経験を持つ。「受託事業は、黒子の事業。だが、脱いだらすごいということが分かってもらえる事業に育て上げたい」と意気込む。

 受託事業では、企画、設計、試作、調達、実装、製造、品質保証、出荷、アフターサービスまでの、製品に関わるすべてのサプライチェーンにおける対応を行うほか、この一部だけを受託するといったビジネスにも乗り出すという。たとえば、テラダ・ミュージック・スコアの「GVIDO」の場合は、試作だけを受託。ここには、VAIO Zのヒンジ構造の技術が使われており、今後、量産化に向けての受託について話し合いをおこなっていくことになるという。

 このように、操業から50年以上続く、高度なモノづくり技術を蓄積した開発、生産拠点の存在が、VAIOの事業成長を下支えしている。

※後編では、VAIOを黒字化した大田社長が描く今後の戦略をレポートします。

(取材・文/大河原克行 写真/大河原克行、VAIO、DIAMOND IT & Business)

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