1976年生まれ。元ライブドア堀江貴文氏やグリー田中良和氏など、インターネット第一世代として活躍した西村博之氏、通称「ひろゆき」。日本の匿名掲示板として圧倒的な存在感を誇った「2ちゃんねる」や動画サイト「ニコニコ動画」などを手掛けてきて、いまも英語圏最大の匿名掲示板「4chan」や新サービス「ペンギン村」の管理人を続ける。
そのロジカルな思考は、ときに「論破」「無双」と表現されて注目されてきたが、彼の人生観そのものをうかがう機会はそれほど多くなかった。
今回の新刊『1%の努力』(ひろゆき)では、その部分を掘り下げ、いかに彼が今の立ち位置を築き上げてきたのかを明らかに語った。

「努力はしてこなかったが、僕は食いっぱぐれているわけではない。
 つまり、『1%の努力』はしてきたわけだ」
「世の中、努力信仰で蔓延している。それを企業のトップが平気で口にする。
 ムダな努力は、不幸な人を増やしかねないので、あまりよくない。
 そんな思いから、この企画がはじまった」(本書内容より)

そう語るひろゆき氏。インターネットの恩恵を受け、ネットの世界にどっぷりと浸かってきた「ネット的な生き方」に迫る――

インターネットに「夢」はあったのか?

僕が「2ちゃんねる」を開設したのは1999年だった。

なぜ、インターネットは「荒れまくってしまう」のか?ひろゆき氏(撮影:榊智朗)


インターネット以前は、電話やFAXという1対1の通信手段や、テレビやラジオなどのマスメディアを使っていた。それが、インターネットによって多数の人が双方向でつながる状態になった。
新しい技術が登場すると、「そのシステムを人はどうやって使うのか?」は、試してみないとわからないものだ。
それは面白そうだと思って、僕は「2ちゃんねる」を開始した。

その頃、「インターネットはマスコミや国境に縛られない『公共圏』だ」と希望を語っている人もいたが、僕はそんな夢を見たことはなかった。
パソコンが普及してインターネットが使われるにつれ、2ちゃんねるのサービスはどんどんと大きくなっていった。

匿名の書き込みは「犯罪の温床」か?

サービスが大きくなるにつれ、「2ちゃんねるは匿名だから悪い」という意見をたくさんもらった。
ただ、2ちゃんねるは「匿名でも書ける掲示板」であって、本名で書いてもいい
いま、Twitter上でも本名でアカウントを作っている人がいるように、2ちゃんねるでも本名で書いている人はいた。
ネット上で実名を書く場合はリスクもあり、「どういう情報をどこまで出すか?」は本人が決めることだ

「2ちゃんねるは犯罪の温床だ!」と言われることもあったが、ニュースになるのはごくごく一部の投稿だった。
実際のところは、くだらない雑談が99.9999…%

それは現在のTwitterで流れている状態と同じだ。掲示板から会員制交流サイト(SNS)に変わっても、人間の中身は大して変わらない
僕は掲示板というオープンな場を提供したにすぎない。
もし、公園で通り魔事件が起きたときに、公園を造園した人や公園を管理している人が捕まるだろうか。
殺人予告がハガキで送られてきたとして、ハガキを作った人や郵便配達の人が逮捕されるだろうか。
ネットの管理人という仕事は、その感覚に近かった。
それに、掲示板上で起きる犯罪は、名誉毀損や違法な情報のやりとりぐらいで、「人の生き死に」に関わるような重大事件は起こり得ない

友達同士や家族でテレビを見ながら、「この芸人はつまらない」「この人は整形だ」とダラダラしゃべることは、誰だってする。
みんな、自分が絡める話題を見つけて、それに対して意見を言いたい。

誰しもがひと言だけ言いたい」のだ。

ツイッターに限らず、ヤフーのコメント掲示板、ユーチューブのコメント欄……。いまやそこかしこで、誰かが何かにひと言を言っている。これは根源的な欲求なのかもしれない。

ということで、みなさんが「荒れる」と呼ぶような状態は、未来永劫なくなることがないと僕は思っている。