ネットで炎上しやすいのは「女の怒り」、ウケるのは「企業の本音」

今や企業の広告宣伝に欠かせないネットマーケティングだが、炎上しやすいものと逆にネット受けものにはパターンがある。事例を交えてその傾向をご紹介する。(ITジャーナリスト 高橋暁子)

いま一番炎上しやすいのは
ワンオペ育児に苦しむ“女性”

 不祥事などを起こしたわけでもないのに、企業がインターネット上で発信したことが炎上することがある。実は、選ぶテーマによって炎上のしやすさは変わってくる。

 今一番扱いが難しいテーマの一つが、“女性”だ。中でも、母親はこうあるべきという価値観を押し付けているように見えるコンテンツと女性を性的に扱うコンテンツは、特に炎上しやすい。

 まず、母親像の取り上げ方が炎上したケースを紹介しよう。

 ユニ・チャームの紙おむつ「ムーニー」の宣伝動画(2016年12月公開)が炎上したのは17年5月。炎上の少し前に同社の生理用品の広告動画が炎上し、紙おむつ動画の批判にも飛び火した形だ。

 育児中の母親の姿を描いた2分程の動画の中では、夜泣きで起こされたり、泣いている赤ちゃんを前に孤軍奮闘する母親の姿が大半を占めていて、動画の最後は「その時間が、いつか宝物になる」という言葉で締めくくられる。父親らしき男性の姿は、動画内にはほとんど登場しない。

 これに対して、「母親が一人で育児に取り組む“ワンオペ育児”を肯定的に扱っているのでは」と批判が集まった。同社広報室は、「本来の意図はリアルな日常を描き、応援したいという思いだった」と言っている。

 実はこのような母親像の取り上げ方は、今までにも何度も批判を呼んでいる。たとえば、花王のCM「ウルトラアタックNeo広がっています篇」(14年7月公開)では、洗剤という日用品の広告なのに「育休明けママ」「幼稚園ママ」など母親ばかり登場する点がおかしいという指摘を呼んだ。

 また、女優の坂井真紀さんが母親役で登場する味の素のCM「日本のお母さん」(12年11月公開)も意見が割れた。母親が子どものためにご飯を作り続けてきたというメッセージに感動する人たちもいたが、逆に父親がほとんど登場せず後ろの方でパソコンをいじっているだけという点を問題視している人も多かった。