陰山英男氏が50歳から始めた英語再学習。その中で自ら編み出したオリジナル学習メソッドのエッセンスを2日連続で紹介します。後編の今回は、より実践的なトレーニング方法と、身近なものを使って日常的に英語に身体を慣れさせるためのアドバイスです。

話したいことを30秒にまとめ、
暗記し暗唱する 

 自分の英語を実用レベルにするには、脳が瞬時に英語に対応できるかどうかがカギ。質問されたとき、意見を述べたいとき、瞬時に英語が口にできることが重要です。

 学習というのは脳を上手に使うトレーニングであって、その最も主要な部分は高速に動かすということ。だから英語ができるようになるということは、脳の英語領域の動かし方を高速化するということだと僕は考えています。

 実践で即役に立つトレーニングの一例を紹介します。自分が話したいことをあらかじめ30秒にまとめて暗記、暗唱するというトレーニングです。

 30秒は人間が話すときにちょうどよいまとまりの時間です。ちなみに、日本語で1分間に話せる内容は、400字詰め原稿用紙にすると約1枚分です。1分は、普段の会話では案外長く感じるものです。だからここでは、その半分の30秒、つまり日本語にして200字程度の内容を英語に訳し、まとめて覚えてしまうのです。

 たとえば僕の場合、「What is the most important aspect of your method?(あなたの教育メソッドで最も重要な特徴はなんですか?)」と聞かれることが非常に多いので、次のような文章をよく使います。

最も重要なことの1つは、それぞれの科目のとても基礎的な部分を勉強することです。もう1つは、いわゆるイメージトレーニングです。
脳の「理解」と「記憶」を司る部分の間には、「イメージ」を司る部分があります。もし脳のこの部分をトレーニングすれば、「理解」と「記憶」がかなり簡単になります。(140字)

One of the most important things / is to study the very basic part of each subject. / Another important thing is what I call "Image Training".
Between the parts of your brain that are in charge of "understanding" and "memorizing", / there is a part that is in charge of "imagining". / If you train this section of your brain, / then "memorizing" and "understanding" becomes much easier.

 話す内容は自己紹介でも仕事の要点でも何でも構いません。自分の話したいこと、仕事で必要なことなどをまとめます。原稿用紙半分の200字以内を目安に日本語で書き、そしてそれを英語に訳しましょう。200字を超えると聞く方にとっても長いし、暗記するのも大変です。なるべく短くまとめたいもの。

 文がまとまったら英語に訳すのですが、まずは自分で訳してみて、それからネイティブやそれに近い人に間違いを直してもらうと安心です。でも、そういう人が身近にいないという人も多いはず。そういう場合は、自分オリジナルの英訳のままでかまいません。間違っている部分があっても、実際に聞いた人にどんどん直してもらえばいいんですから。

 最初から完璧な英語にしよう、完璧に話そうなんて思わないことです。できることから、できる範囲でやっていけばいいんです。実は、そうすることで得られるメリットもあるのです。