「史上最強の長官」とうたわれた森信親・金融庁長官森信親・金融庁長官の行く末をめぐっては、任期4年目に加えて、日本銀行総裁や財務省次官への就任、首相官邸入りなどの諸説が飛び交ってきたが、どれも異例だ Photo:kyodonews

財務省に代わる「新たな最強官庁」と評する声も上がった金融庁において、「史上最強の長官」とうたわれた森信親長官。昨年7月に異例の任期3年目に突入し、その権勢は絶頂を迎えたかに思われたが、ここにきてこれまで改革に取り組んできた政策に対して、続けざまに逆風が吹き荒れだした。(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木崇久)

「4年目のうわさを聞いた。まさかとは思うが、ないとは言い切れない」

 年の初めごろ、金融関係者が口を開くたびにこの「4年目」話が飛び出した。昨年7月の官庁人事で任期3年目に突入し、その1年の折り返し地点に近づいた金融庁の森信親長官が続投するかもしれないという臆測だ。

 2年が通例である金融庁長官の任期だが、森長官は金融行政において数々の改革を手掛け、実績を残してきた実力者。また、「霞が関」の人事権を握る首相官邸のキーパーソンである菅義偉官房長官や、金融庁の“ボス”も兼任する麻生太郎副総理兼財務大臣の信任も厚い。そうした背景があり、森長官は任期3年目に入った。

 とはいえ、「3年目」は異例ではあるが前例はあった。しかし、「4年目」となると前代未聞だ。それでも、金融庁内も含めて多くの金融関係者が否定できずにいた。

「これほどみんながみんな4年目の話をするということは、任期の終わりでレームダック(死に体)に陥らないために流した、森さんのブラフ(はったり)じゃないか」。そんな見立てを披露する森長官に近い金融関係者もいたが、それほどまでに「4年目説」は真実味を帯びていた。