入浴で循環器ケアと 睡眠不足ケアをPhoto:PIXTA

 科学誌「PLOS ONE」に載った愛媛大学の研究によると、中高年期の日本人は週に5回以上の入浴で動脈硬化リスクが低下し、血中BNP(心臓に負担がかかると増えるホルモン)の上昇が抑制されるようだ。

 本研究は、同大・老年内科が立ち上げた疫学調査「しまなみ健康推進プログラム」の一環。

 2006~13年に同大附属病院抗加齢・予防医療センターの抗加齢ドックを受診した1593人を対象に、入浴頻度や時間、温度についてのアンケート調査を実施。回答があった873人(男性345人、女性528人)を解析対象とし、そのうち164人については、追跡期間中に2回以上の時点でデータを比較している。

 対象者の入浴頻度は平均5.8回/週、1回の入浴で湯船につかる時間は平均12.4分だった。

 入浴回数で対象者をグループ分けし、動脈硬化と心機能との関係を調べた結果、5回以上/週の群は、4回以下/週の群に比べて、血管年齢が有意に若く、心臓の元気度が高かった。

 入浴頻度や温度との関連では、入浴回数が多くなるほど血圧が低く心臓が元気になり、お湯の温度が41℃以上では、それ以下より血管年齢が若いことが判明している。

 また「週に5回以上、41℃以上のお風呂につかる」という習慣を続けると血中BNPの上昇が抑えられ、心機能と血管年齢を若く保つことができるようだ。

 入浴が心臓・血管に良い理由として、温熱作用で(1)血流が良くなり血圧が下がる、(2)血管内皮細胞の機能が改善し動脈硬化を抑制するの2点が知られている。

 さすがに湯船につかることは難しいが、最近は慢性心不全患者に対する乾式サウナ(40~60℃)を使った温熱療法(和温療法)の有効性と安全性が多施設の臨床試験で確認されている。

 また、タイミングの良い入浴は「睡眠負債」の返済にも有効。この夏、睡眠不足だった人は就寝90分前に41℃のお湯につかって体温を一時的に上げるといい。身体の「お休みスイッチ」が入り、寝付きが良くなる。猛暑で酷使された心臓のケアとで一石二鳥である。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)