寝る前に風呂に入るという何気ない習慣。しかし、風呂に入るタイミングは国によって異なり、風呂そのものに対する価値観も大きく違う。日本ならではの風呂文化を、海外の人々はどう見ているのか?(清談社 中村未来)
「就寝前に入浴」は
日本独自の文化だった!
日本人の心の拠り所とも言える“お風呂”。その日の疲れを取り除いて癒やされる、かけがえのない存在だ。しかし、風呂に“癒やし”を求めるのは、じつは日本ならではの文化で、海外ではそういった概念はないという。湯まわり設備メーカーの(株)ノーリツの広報担当の大沢さんに話を伺った。
「日本と海外ではそもそも、お風呂に求めるものが異なります。海外の方にとってお風呂とは、汚れを取る・清潔にするためのものです。一方日本人は、体を清潔にすることに加え、癒やしやリラックスも求めます。日本で広く普及している追い焚き機能ですら、海外の方にはとても新鮮に映るようです」(大沢さん、以下同)
風呂に求める価値観の違いは、入浴時間を比べてみるとよくわかる。ノーリツが日本に在住する外国人644人(※1)を対象に行った風呂に対する意識調査によると、『日本に来てから入浴時間が長くなった』という人は、全体の6割を超えた。本国ではシャワーだけで済ませていた人も、日本に来てから湯船にゆっくりつかるようになったためだ。また、風呂に入るタイミングそのものが変わったという声も多い。
「日本では、就寝前にお風呂に入るという習慣が一般的です。汚れたままで布団に入りたくないという理由によるものだと思います。しかし、英語圏では起床後にシャワーを浴びるほうが一般的です。これは『人に会う前の身だしなみ』という意識のほうが強いためです。もちろん、国や風土によって異なり、年間を通して湿度の高いアジア圏の国では1日2回シャワーを浴びるのが普通という場合もあります。いずれにせよ、『寝る前にお風呂』というのは、日本独自の習慣なんです」
(※1)出典:(株)ノーリツ在日外国人の日本のおふろ文化に対する実態・意識調査(Webアンケート)。雑誌「Tokyo Weekender」の読者を中心とした在日外国人(英語圏を中心とした62の国と地域出身の英語話者の男女)を調査対象とした。