【お寺の掲示板の深い言葉 20】「カモンベイビー、ゴクラク」正宣寺(大阪) 投稿者: @shosenji_web  [9月3日]

この世にこだわるのは

「C’mon baby ゴクラク
阿弥陀さまのいる country
C’mon baby  ゴクラク
十万億かなた ウエストワード」

 「C’mon baby アメリカ」ならぬ、「C’mon baby ゴクラク」。実は今回2つのお寺からDA PUMPの大ヒット曲「U.S.A.」に関連した投稿が挙がっていました。

 「一体なんのことやら?」と思われる方もいると思うので、説明させていただきます。DA PUMPが6月6日に「U.S.A.」という曲をリリースし、それが「ダサ格好いい」曲としてSNSを中心に非常に多くの人々から注目を集めました。YouTubeの「U.S.A.」の再生回数は10月中旬の時点で9000万回を突破。「カモンベイビー アメリカ」というサビが非常に耳に残り、良い意味でちょっと中毒性のある曲です。

 このサビのフレーズを意識してつくられたのが、今回の掲示板「C’mon baby ゴクラク」。内容を簡単に説明すると、「阿弥陀仏が西方(ウエストワード)の遥か彼方にある極楽浄土(阿弥陀仏のcountry)から、『こちらに来い(カモンベイビー)』と呼びかけてくださっている」ということです。

 極楽浄土は阿弥陀仏が建立した国で、『阿弥陀経』の中で浄土の素晴らしさが説かれています。しかし、安らかで清らかなお浄土にいらっしゃる阿弥陀仏から「カモンベイビー」といくら呼び掛けられても、わたしたちは苦しみが存在するこの世界にどうしても愛着を感じてしまいます。親鸞は『歎異抄』の中で、急いで浄土に行く気持ちが起こらず、恋しいとも思えないのは煩悩のしわざであると説いています。

【お寺の掲示板の深い言葉 20】「カモンベイビー、ゴクラク」雲西寺(大分) 投稿者: @9Gz3yxE34eVnpNP [10月8日]

お慈悲の救いからは逃れられない

 2枚目の掲示板は「もう逃げられん」。大分県のお寺の掲示板です。

 「カモンベイビー ゴクラク」といつもわたしたちに呼び掛けてくれている阿弥陀仏ですが、阿弥陀仏のお慈悲は「背いて逃げるものを、どこまでも追いかけて迎えとる」はたらきをもっています。ですから、この掲示板の意図するところは、恐らく「阿弥陀仏の慈悲の救いのはたらきからはもう逃げられん」ということなのでしょう。

 煩悩を抱え、急いでお浄土に行きたいとも思わないわたしたちを何としてでも救って浄土に往生させようとする仏さまのお慈悲。そのはたらきは常にわたしたちのもとに届いているのです。

(解説/浄土真宗本願寺派僧侶 江田智昭)