【お寺の掲示板の深い言葉 16】「初心をお忘れの方がおられます」永明寺(福岡) 投稿者: @matsuzakichikai [7月18日]

「初心」の忘れ物

 こちらは北九州市にあるお寺のご住職の投稿です。

 自動車にくっつける「初心者マーク」が一緒に掲げられています。要は、お寺の前にこれが落ちていました、というお知らせなのですが、それを掲示板の言葉として、他の人のこころにも響くようにしているところが一味違います。

 みなさんも自分の「初心」をどこかに落とされてはいませんか?

 若い頃は「何かを成し遂げよう!」といった気持ちで満ち溢れていたのではないでしょうか。

 初心という言葉を初めて使ったのは世阿弥といわれています。『花鏡(かきょう)』という伝書に「初心忘るべからず」と書き残しました。それも三度繰り返す形で。曰く「是非の」「時々の」「老後の」と。これは、人生にはいくつもの初心があるということです。若いとき、人生の時々で、そして老後においても。

 以前ご紹介したスティーブ・ジョブズさんも、「仏教には初心(beginner's mind)という言葉がある。初心を持つのはすばらしいことだ」と言っています。

 あなたの初心をぜひ思い出してみてください。

【お寺の掲示板の深い言葉 16】「初心をお忘れの方がおられます」金嶺寺(東京) 投稿者: @1031_415 [9月8日]

成功の反対は「やらないこと」

 2つ目の標語は、谷中にある天台宗のお寺の掲示板にあったものです。

 「成功の反対は失敗ではなく『やらないこと』」

 サッカー日本女子代表「なでしこジャパン」の元監督、佐々木則夫さんの言葉です。

 できないことの言い訳を延々として、何もしない人がどの職場にもいるものです。確かに何もしなければ失敗もしないので、本人は傷つかず、立場やプライドは守られるかもしれません。要領よく立ち回る人によく見られる傾向です。

 しかし、それは正しい行いなのでしょうか。仏典『法句経』は仏陀の教えを短い言葉で伝えたものですが、その中にこうあります。

 「善く説かれたことばでも、それを実践しない人には、実りはない」(『法句経』51)

 実りあるように、世阿弥の口伝に記された「初心」を思い出して、行動してみましょう。

(解説/浄土真宗本願寺派僧侶 江田智昭)