高齢者同士の恋愛や見合いは珍しいものではなくなっているが…高齢者同士の恋愛や見合いは珍しいものではなくなっているが…(写真はイメージです) Photo:PIXTA

「やらせてくれないのは男と同じ」
悪びれずに言い放たれた

「信じられない、なんてエロじいなの!」

 梓さん(仮名・50歳)は嫌悪感いっぱいに呟いた。

 彼女の仕事は保険のセールス。20年近いキャリアを積む間に人脈が広がり、お見合いのあっせんを頼まれることがずいぶん増えた。

 以前は「うちの息子(娘)に誰かいい人いないかしら」との相談が多かったが、近年増えてきたのが、パートナーに先立たれた高齢者同士の縁を取り持つことだった。

 先だっても、奥さんを3年ほど前に病で亡くした70代男性と、夫を事故で亡くして10年以上になる70代女性を引き合わせた。といっても、2人とも十分に社会経験がある大人なので、小料理屋で軽く紹介し、席を立った。第一印象では、男性はかなり乗り気、女性もまんざらでもないように見えた。

 ところが翌日、耳を疑う電話がきた。女性からだった。

「あの人、店を出たらすぐに私を家に呼んだんですよ。『もっとリラックスして話したい』って。それもそうかなって思って、付いていったの。そしたらもう、家に入るなり、押し倒されて、キスされたんですよ。『何するんですか、やめてください』って怒ったら、あの人、なんて言ったと思います。『俺は無駄な恋愛に時間を費やす余裕はない。あんたはやらせてくれるのか、くれないのか。とにかくそれだけ教えてくれ』ですって。いい年して、あの人は結婚イコールそれ、なのね。もう、『ばかにしないで』って叫んで逃げてきました。長年生きてきて、こんなに嫌な目に遭ったのは初めてです」

 涙声だった。

「そんなひどいことを言う人だとは思いませんでした。面白くて、明るい人だと…。亡くなった奥さんともとっても夫婦仲はよかったんですよ。誤解があるかもしれませんから、ちょっと向こうに電話してみますね」