2万人をみてきた組織開発コンサルタント・勅使川原真衣氏の著書『組織の違和感 結局、リーダーは何を変えればいいのか?』が刊行。坂井風太氏も「革新性がある」と絶賛した同書の内容をもとに、抜粋・再構成して特別公開する。
地味すぎる業務に耐えられない
製造業のクライアントで、印象的なケースがありました。
海外向けの商品も作っている会社での出来事です。
新卒で元気なエネルギッシュ系女子が入社してきたのですが、研修のときから「私が私が」と自己主張強め。
学生時代からの念願だった海外との取引をする部署に配属され、やる気に満ちていました。
そんな彼女の上司になったのが、清濁併せ呑むことのできる口下手気味な穏やか系40代の男性。
組み合わせ的には悪くないように見えるのですが、実はこの部署、新卒が入っては辞めての定着しない部署でした。
しばらくして、今回もその兆候が現れ始めます。
新卒の方にとっては花形の部署に見えていたのですが、蓋を開けてみると、意外に地味な作業が多いことがわかったのです。
社会人経験のある方なら心得ていらっしゃると思うのですが、仕事って当然、華やかなことばかりではありませんよね。どんな仕事にも地道な作業があり、表に出てこない役割もたくさんある。
海外営業といっても、海外とのやりとりだけやっているわけではない。議事録をとったり、資料作成、出張の手続きなどなど、業務は多岐にわたります。
ですが、海外向けの仕事をすると思っていたその新人は、地味すぎてその日常が耐えられなかったのです。
花形の部署は花形の部分しかないと思い込み、ついには「せっかくこの会社に入ったのにこんな仕事なんて」と言って、退職願を出しました。
「決めつけ」ないために会話をする
こういうときって、相手は決意して言ってくるわけだから、何を言っても無駄だな、と思ってしまうのもわかります。でも、それこそが「決めつけ」です。
冷静に考えると、彼女はまだ新卒で、仕事への解像度が低いまま不満を表明することもできず、一方的に会社を見切ってしまったんですね。
この場合、上司はきちんとネガティブなことも含めてフィードバックなりのコミュニケーションを口下手だろうがなんだろうが、怠ってはいけませんでした。
フィードバックというのは、一方的に評価を突きつけることではありません。「とりあえず1on1でよしなに」でもありません。
上司のキャラクターや傾向が何であれ、必ずやらなければいけないのは、部下にきちんと職務を説明することです。
マネージャーの業務としてきちんと課業の詳細や責任の範囲、成果のイメージやキャリアパスの説明をする。どういうところに成長実感がありそうかを、本人にちゃんと聞く。
「こういうことを気にする新卒が多いんだけど、こういう意図があるからお願いしてます。でも、しんどくなる前に言ってね。いきなり辞めちゃったら僕も悲しいからさ」
そうほほ笑むとか。
彼女にいてほしいのは本当ですよね。
だから、「辞められちゃったらなんか寂しいな」とか、「ごめんね、僕に見えてないことがあると思うんだけど」とかっていう吐露は意外と相手に響くものです。
「固有の経験」をしてきた相手を尊重する
あと、こういう自信家は自分がすごいことをやってきたと思っているから、それを認められたいんですね。
だから上司のほうはシンプルに役割として、ただそれを聞いてあげればよかったんです。
でも何も聞かれずに、「普通はこうだから」と言われることに不満が募った。
甘ちゃんだなあと言うのは簡単ですが、普通と一括りにできない、固有の経験をしてきたその相手の話を聞いてあげるというのもひとつの方法です。
組織のための聞き役に徹する場面もあれば、とことん説明し、時に突っ込むべき場面というのもある。
リーダーは「自分はこういう人間だから……」より、「カメレオン」でなんぼなのです。
代官山 蔦屋書店にてイベント開催!
このたび、『Googleで学んだ 圧倒的成果を出し続けるマネジャーの最優先事項』の著者・中谷公三さん、諸橋峰雄さん、水野ジュンイチロさん(元Googleマネジャー)と『組織の違和感』著者・勅使川原真衣さんとの対談イベントを開催いたします。
組織開発の現場から生まれた「違和感」を起点にした組織開発と、Googleで実践されているエンパワメント型マネジメント。
異なるアプローチを持つ著者4人の対話を通じて、マネジャーが今、本当に優先すべきことを一緒に考えていきます。
忙しいリーダーに、効果のあることだけ
発売5日で大重版!
その後たちまち、2万7千部突破!!
とっても売れてます!!!

「好き嫌い」や「やる気」、
「あうんの呼吸」に頼らず
組織を機能させるための具体策!
対話より先に、やるべきことがある。
「大丈夫です」のひとことでモヤッとしたとき、
待ちの姿勢ばかりの部下に自走してもらうにはどうしたらいいのか、
スタンドプレーが多い部下に「チームで仕事をしよう」と伝えるための効果的な伝え方は?……
ビジネスの現場に尽きないコミュニケーションの悩みを、「マネジメント」のスキルとして、「3段階」に分けて打ち手を授けるのが本書です。
まずは土台となる「観察」のスキルを紹介。ここでは、違和感に着目するというユニークな手法をとります。
そして、「自分を知る」「相手を知る」「組み合わせる」の3段階で、関係性から組織の最適解を導き出します。
自分と相手の「持ち味」を知り、
組織をつなぎ直すための一手を
この3段階を経て、違和感を乗り越えるための伝え方や振る舞い方を具体例とともに紹介します。
スキルといっても、難しいものではありません。「あれ、今なんか変だったな」という気づきを、手がかりにつかむこと。
さらに本書では、「持ち味」を知るためのいくつかの診断も掲載。すぐにチームに実装できるような作りにしています。
事前に特別な準備や学習はまったく不要。やるべきことが明確になり、現場のもやもやがクリアになります。
いつでも「今ここ」での気づきから組織を改善できる。行き詰まった状態を打開する新鮮な方策が詰まった、忙しいリーダーの支えになる一冊です。

本書の内容
はじめに
ギリギリな組織の頼みの綱は
人それぞれが「正しさ」を生きている
「持ち味」の組み合わせと「解釈」のクセ
第1章 違和感とは何か? ―― 「決めつけ」が横行する現場で
観察の達人!? コナンくん
仕事に本音はいらない
「なんか変な感じ……」の正体
人はみな「違う色のメガネ」をかけている
「職場のすれ違い」は決めつけから生まれる
とにかくみんな疲れている
すべてのコミュニケーションの基本となる「観察」の3ステップ
第2章 「自分を知る」 ―― 違和感に気づくと「自分」がわかる
自分の本音がわからない
変えられない性質は確かにある
手がかりは「どうしてもとりつくろえない瞬間」
「わかってほしかった」は「解釈のクセ」が生み出している
「自分が知らない自分」はスマホが教えてくれる
第3章 次に、「相手を知る」 ―― 人間関係の違和感から「相性」を知る
「伝える」の前に「見る」がある
「言わなくてもわかるでしょ」はマネジメントの怠慢
相手の何を「見る」のか? ―― ソーシャルスタイルの4類型
「他者の合理性」を知るヒント
「人それぞれ」では話が進まない
第4章 そのうえで、「組み合わせる」 ―― 違和感を役立て最高の組織をつくる
「今いるメンバー」で最高のチームをつくる
「好き嫌い」より「相性」を考える
それは「評価」ではなく「評判」です
「自分でやったほうが早い病」への処方せん
「似た者同士」がうまくいくとは限らない
職場は「ドレッシング状態」にならなくていい
個人と組織のサンドイッチ作戦
第5章 違和感を乗り越えるための話し方・振る舞い方
役割の実行を後押しする「面談」「相談」「雑談」「対話」
「大丈夫です」の複雑さ
「よかれと思って」が残念なワケ
待ちの姿勢ばかりの部下に「自走してほしい」と伝えたい
スタンドプレーが多い部下に「チームで仕事をしよう」と伝えたい
コミュ力が高い人の「真の使命」は、相手に合った手段を選ぶこと
危うい場面で役に立つ「否定しない技術」
会議時間を短縮すれば「生産性」が高まるのか?
「困っている人」は「決めつけていない人」
第6章 「いてくれてありがとね」から始める組織改革
「いい人材がいない」と嘆く人は組織の価値を見落としている
「重すぎない信頼関係」のススメ
「健全に疑う」のススメ
100点を取ってきた子どもに「偉いね」と言ってはいけない理由
100%わかり合うことは無理、それでも「訂正」し合うことはできる
「自分のまま働く」ために
解説 ―― 坂井風太