2万人をみてきた組織開発コンサルタント・勅使川原真衣氏の著書『組織の違和感 結局、リーダーは何を変えればいいのか?』が刊行。坂井風太氏も「革新性がある」と絶賛した同書の内容をもとに、抜粋・再構成して特別公開する。

組織の違和感Photo: Adobe Stock

地味すぎる業務に耐えられない

 製造業のクライアントで、印象的なケースがありました。

 海外向けの商品も作っている会社での出来事です。

 新卒で元気なエネルギッシュ系女子が入社してきたのですが、研修のときから「私が私が」と自己主張強め。

 学生時代からの念願だった海外との取引をする部署に配属され、やる気に満ちていました。

 そんな彼女の上司になったのが、清濁併せ呑むことのできる口下手気味な穏やか系40代の男性

 組み合わせ的には悪くないように見えるのですが、実はこの部署、新卒が入っては辞めての定着しない部署でした。

 しばらくして、今回もその兆候が現れ始めます。
 新卒の方にとっては花形の部署に見えていたのですが、蓋を開けてみると、意外に地味な作業が多いことがわかったのです。

 社会人経験のある方なら心得ていらっしゃると思うのですが、仕事って当然、華やかなことばかりではありませんよね。どんな仕事にも地道な作業があり、表に出てこない役割もたくさんある。

 海外営業といっても、海外とのやりとりだけやっているわけではない。議事録をとったり、資料作成、出張の手続きなどなど、業務は多岐にわたります。

 ですが、海外向けの仕事をすると思っていたその新人は、地味すぎてその日常が耐えられなかったのです。

 花形の部署は花形の部分しかないと思い込み、ついには「せっかくこの会社に入ったのにこんな仕事なんて」と言って、退職願を出しました。

「決めつけ」ないために会話をする

 こういうときって、相手は決意して言ってくるわけだから、何を言っても無駄だな、と思ってしまうのもわかります。でも、それこそが「決めつけ」です。

 冷静に考えると、彼女はまだ新卒で、仕事への解像度が低いまま不満を表明することもできず、一方的に会社を見切ってしまったんですね。

 この場合、上司はきちんとネガティブなことも含めてフィードバックなりのコミュニケーションを口下手だろうがなんだろうが、怠ってはいけませんでした。

 フィードバックというのは、一方的に評価を突きつけることではありません。「とりあえず1on1でよしなに」でもありません。

 上司のキャラクターや傾向が何であれ、必ずやらなければいけないのは、部下にきちんと職務を説明することです。

 マネージャーの業務としてきちんと課業の詳細や責任の範囲、成果のイメージやキャリアパスの説明をする。どういうところに成長実感がありそうかを、本人にちゃんと聞く。

「こういうことを気にする新卒が多いんだけど、こういう意図があるからお願いしてます。でも、しんどくなる前に言ってね。いきなり辞めちゃったら僕も悲しいからさ」

 そうほほ笑むとか。

 彼女にいてほしいのは本当ですよね。
 だから、「辞められちゃったらなんか寂しいな」とか、「ごめんね、僕に見えてないことがあると思うんだけど」とかっていう吐露は意外と相手に響くものです。

「固有の経験」をしてきた相手を尊重する

 あと、こういう自信家は自分がすごいことをやってきたと思っているから、それを認められたいんですね。

 だから上司のほうはシンプルに役割として、ただそれを聞いてあげればよかったんです。

 でも何も聞かれずに、「普通はこうだから」と言われることに不満が募った。

 甘ちゃんだなあと言うのは簡単ですが、普通と一括りにできない、固有の経験をしてきたその相手の話を聞いてあげるというのもひとつの方法です。

 組織のための聞き役に徹する場面もあれば、とことん説明し、時に突っ込むべき場面というのもある。

 リーダーは「自分はこういう人間だから……」より、「カメレオン」でなんぼなのです。