台風19号甚大な被害をもたらした台風19号から1ヵ月。企業の苦境も伝えられています Photo:PIXTA

突然起こる災害…
経営者ができる最大の備えとは?

小宮一慶・小宮コンサルタンツ代表小宮一慶
小宮コンサルタンツ代表

 今年は自然災害が多く発生しました。被災地の状況が報じられる中で、工場や事務所が被災した、販売先や顧客が被災して売り上げが減少した、仕入先が被災して原材料などの供給が停止した、従業員が出勤できなくなった…といった企業の苦境が伝えられました。

 突然起こる災害などの危機に対し、経営者はどのような準備をしておけばいいのか。多くの経営者は、BCP(事業継続計画)の策定を思い浮かべるかもしれません。それももちろん大事なことですが、最大の備えは「自社でコントロールできるお金を持つこと」です。つまり、事業で高収益をあげて、その一部をキャッシュやそれに近い性格を持つ金融商品で蓄えておくということ。

 このコラムでも何度かお話ししましたが、私の高収益企業の定義は、「付加価値の2割の営業利益を出していること」です。付加価値とは、売り上げから仕入れなどを引いた自社でつくり出した価値のこと。差別化された商品やサービスを顧客に提供し、従業員に十分な給料を払った上で利益を確保し、それを蓄えておく。危機に備える経営の鉄則です。

 このことは、松下幸之助さんがおっしゃった「ダム経営」にも通じます。ダム経営とは、普段からダムに水をためておくと日照りの時にも安定して下流に水を供給できるのと同じように、普段からヒト、モノ、カネに少し余裕を持ち、安定的な経営を進めることです。特に、資金はとても重要です。

 生み出した利益を遊びに使うことなどはもっての外ですが、会社の将来のためといえども、すべてを設備投資などに使ってしまってはいざというときに「コントロールできるお金」を持つことができません。いざというときのためにお金を蓄えておくことが大切なのです。

 会社に資金の余裕があれば、被災して操業を停止しなければならない状況になっても、持ちこたえることができるでしょう。被害に遭った従業員を休ませて、しばらく自宅の復旧に専念してもらうことも可能です。しかし、余裕がないと操業停止や倒産、廃業ということにもなりかねず、従業員に給料が払えず解雇することになり、大変な状況にある従業員にさらなるダメージを与えてしまいます。