◆「すべて同意! ビジネス価値創出への『5つの心構え』をまとめた決定版だ」(入山章栄・早稲田大学ビジネススクール教授)
◆「これは仕事術ではない。ゲームのルールは変えられることを証明した珠玉の実践知だ」(鈴木健・スマートニュース創業者・CEO)
 コロナ禍で社会構造やビジネスモデルが変化する今、「生産性」「効率」「成果」が見直されている。そんな中、各氏がこぞって大絶賛するのが『その仕事、全部やめてみよう』という書籍だ。
 著者は、ITベンチャーの代表を10年以上務め、現在は老舗金融企業のCTOを務める小野和俊氏。2つのキャリアを通して、それぞれがどんな特徴を持ち、そこで働く人がどんなことに悩み、仕事をしているのかを見てきた。その中で、ベンチャーにも大企業にも共通する「仕事の無駄」を見出す。
 本連載は、具体的なエピソードを交えながら、仕事の無駄を排除し、生産性を高めるための「仕事の進め方・考え方」を解説するものだ。

業務命令でビットコインを配布したら、社員がスキルアップしたPhoto: Adobe Stock

「言葉」には限界がある

 世の中で最も説得力があるのは体験だ。たとえ鉛筆一本でも、言葉だけでは完全に説明することはできない。「HBで」「メーカーはトンボ鉛筆で」「鉛筆の先はカッターナイフで削ってあって」と特徴は説明できるが、目の前にしないと、伝わる情報は限られる。言葉には限界があるのだ。

 会社の進むべき道や技術者が身につけるべき技術についても同様のことが言える。どんなに言葉を尽くしても、体験には勝てない。

 裏返して言えば、体験さえしてしまえば、多くを語らずともそれがどんな感動をもたらし、どんな可能性を持つのかを瞬時に理解できる。自分がいま携わっている仕事で「ここで使えるな」ということだってすぐわかるだろう。

 セゾン情報システムズでは、金融関連の事業部でクレジットカードのシステムを作っていたので、FinTechやビットコイン、ブロックチェーンなどは見て見ぬふりはできない領域だった。

 だが、「本を読んでブロックチェーンの勉強をしておくように」と指示を出したところで、すぐ理解できるものではない。実際に本を読んでみたが「暗号通貨が……」と冒頭に書いてあり挫折した、という声もあった。

 だから私は、事業部180人全員に、ビットコインを”体験”する場を作ることにした。具体的には、30人ずつに分けて体験会を6回実施した。

イヤイヤ来ていた参加者たち

 体験会に参加するまでは、「これ、業務命令だよな?」「なんだよ忙しいのに!」と愚痴をこぼしながらしぶしぶ参加するメンバーもいた。