◆「すべて同意! ビジネス価値創出への『5つの心構え』をまとめた決定版だ」(入山章栄・早稲田大学ビジネススクール教授)
◆「これは仕事術ではない。ゲームのルールは変えられることを証明した珠玉の実践知だ」(鈴木健・スマートニュース創業者・CEO)

 コロナ禍で社会構造やビジネスモデルが変化する今、「生産性」「効率」「成果」が見直されている。そんな中、各氏がこぞって大絶賛するのが『その仕事、全部やめてみよう』という書籍だ。
 著者は、ITベンチャーの代表を10年以上務め、現在は老舗金融企業のCTOを務める小野和俊氏。2つのキャリアを通して、それぞれがどんな特徴を持ち、そこで働く人がどんなことに悩み、そして仕事をしているのかを見てきた。その中でベンチャーにも大企業にも共通する「仕事の無駄」を見出す。
 本連載は、具体的なエピソードを交えながら、仕事の無駄を排除し、生産性を高めるための「仕事の進め方・考え方」を解説するものだ。

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王者マイクロソフトへの挑戦

 私は2000年にアプレッソを立ち上げ、データ連携ソフト「DataSpider」を開発していた。ある日、電撃的なニュースが飛び込んできた。王者マイクロソフトが、DataSpiderの競合製品「BizTalk」をリリースすることがわかったのだ。

 当時、アプレッソはまだ信頼も実績もなく社員も10人程度。「これはもう勝ち目がない」。そんな絶望感が社内を襲った。

 競合製品があるのはわかっていた。EAI(Enterprise Application Integration)といわれる分野の製品だ。だが外資系ベンダー中心のこうした製品は、金額がDataSpiderより一桁高く、さらにチューニングする箇所も多く、設定するだけで通常のシステム開発とあまり変わらないくらい大変だった。

 もっと安価で機能も絞られていて、大型のものだけではなくExcelやメールともデータ連携ができないか。専門知識がなくても使いこなせるツールが求められているのではないか。

 こんな仮説を立て、「これはいける」と手ごたえを感じながら企画・開発を進めていた私たちにとって、同価格帯でコンセプトも近い製品を王者マイクロソフトが投入してきたことは、会社存続に関わる脅威だった。

 BizTalkを調査すればするほど、私たちはますます焦りを感じ始めた。なにせ王者マイクロソフトの製品である。投入できる資本は、我々とは雲泥の差があり、経験豊かな技術者も豊富にいる。

「山」を見極め、一点突破を図る

 BizTalkは当たり前だが、よくできた製品だった。「BizTalkにできて、DataSpiderにできないこと」が次々と発見され、私たちの焦りは頂点に達した。対応可能な接続先が豊富で、連携の際のデータ変換ロジックも多数用意されており、「我々のような小規模チームが短期間に同じものを作るのは不可能」と戦慄を覚えた。

 弱点を埋める戦いを始めれば、敗北は明らか。そこで私たちは、「山」、つまりDataSpiderにしかできないこと、DataSpiderが強みとすることに磨きをかけることにした。

 具体的には、「ソースコードを書かずにデータ連携処理ができる」「必要な教育コストが少なくて済む」「日本で主流の製品との連携が充実している」という3点を「山」とし、3つの価値を高めることに集中した。