「忙しすぎて本を読む時間がない」「1冊読み切るのに時間がかかる」「読んでも読んでも身につかない」――そんな悩みを抱えているビジネスパーソンは少なくありません。本を読めばいいことはわかっているのに、自主的に読めない人もいるでしょう。
何の本をどう読み、どう活かしていくか――働くうえで必携のビジネススキルを良書から抜き出したのが『ひと目でわかる! 見るだけ読書』。本書は、コスパやタイパを重視する現代的な読書スタイルを重視する人にとっても、魅力的な読み解き&活用法です。たった「紙1枚」を見るだけで本の最も大事なポイントが圧倒的なわかりやすさで理解でき、用意したワーク1枚を埋めるだけで即スキル化できる1冊。それも1万冊の読書体験と1万人を教えてきた社会人教育の経験から、絶対に読んでほしい24冊+αを紹介。ただ、エッセンスをまとめただけでなく、読後には、紹介した本が有機的につながっていく仕掛けがあなたのビジネススキルを飛躍的に向上させます。
自分よりも人の問題を解決することで
幸せを感じるようになる
仕事においても人生においても、「目的」は重要なキーワードです。一方で、「なぜ働くのか?」「何のために生きるのか?」といった目的は、確かに大切な問いかけではあるのですが、どうしても抽象度が高くなってしまいます。そんなときに参照したいのが、名著と評されるような本です
今回は「目的の本質」について学べる名著『イノベーション・オブ・ライフ』を参照しながら、この一連の流れを体感していってください。
著者のクリステンセンは、ハーバード・ビジネス・スクールの教授でした。通常、クリステンセンの代表作は『イノベーションのジレンマ』(翔泳社)という戦略論の名著であり、他のブックガイドをひも解くとこちらが紹介されているケースのほうが大半です。
もちろん『イノベーションのジレンマ』も重要な本ですが、戦略論と書いた通り、内容としては経営者や戦略立案担当者向けなので、本書では立場や年次を問わず全社会人必読の『イノベーション・オブ・ライフ』を選書しました。
というのも、この本の原書のタイトルは『How will you measure your life?』です。「何を人生のメジャー=モノサシにして生きていくか?」という意味ですから、すべての人に当てはまる内容になっています。私自身、この10年の間に何度も再読している座右の書の1つです。
『イノベーション・オブ・ライフ』は、クリステンセン教授がハーバード・ビジネス・スクールで行なった最期の授業がベースとなっています。
ハーバードに入れるような極めて優秀な学生たちであるにもかかわらず、卒業後に誰もが幸せになっているわけではない……。仕事やキャリアでの成功にまい進するあまり、その過程で何か大切なことを見失ってしまっているのではないか。
『イノベーション・オブ・ライフ』は、このような問題意識から世に問われた本です。したがって、本書が説く人生の「メジャー=モノサシ」は、仕事での成功や地位・名誉といったものではありません。
では、いったい何なのか。
本の終盤で、クリステンセンは「メジャー=モノサシ」に関連するキーワードとして「目的」「自画像」「献身」「尺度」といったキーワードを挙げています。
再度繰り返しますが、仕事で「成果を出し、昇進・昇格し、キャリアアップして成功すること」は人生の「尺度=目的」にはなりません。
これを「自画像」という別のキーワードと組み合わせて理解してみましょう。
原書では、「自画像=Likeness」と表記されているのですが、この訳がどうして「自画像」になるのか。
これは、文字通り自分の自画像が美術館に飾ってあることを想像してみると一気にわかりやすくなります。もし、その自画像から読み取れることが、金銭欲・権力欲といった目的意識ばかりだったとしたら……。
「献身=没頭」の結果として、そんな要素しか滲にじみ出ていないような「人相=自画像=Likeness=自身の選好」になってしまっていたとしたら……。
こんな「自画像=生き様」は、私だったら絶対に嫌です。
好きなことをやりつつも、「今だけ、金だけ、自分だけ」をどれだけ超えていけるか。
「Likeness =自画像」という翻訳のニュアンスを、私はこのように解釈して受け取っています。
あるいは、本の中では「衛生要因(衣食住といった生活的基盤の安定的な確保)より動機付け要因(心の底からやりたいかどうか)を重視しよう」「短期志向だけでなく長期志向も大切にしよう」「必然だけでなく偶然もフル活用していこう」「子育てを安易にアウトソーシングするな」等々、さまざまな人生の「尺度=判断基準」が紹介されています。いずれも、誰もが陥ってしまいがちなワナばかりです。
以上、これで「目的」「自画像」「献身」「尺度」といったキーワードについては、一通りカバーできました。
さて、本題です。
ここまでの内容を踏まえたとき、クリステンセン自身が最も言いたかった「メジャー=尺度=目的」は、おそらく次の1文なのではないかと私は考えています。
絶望は消え、再び幸せを感じるようになったのだ。
これが、クリステンセンが最期の授業で私たちに残してくれた「目的の本質」だと、私は受け取りました。すなわち、仕事にせよ人生にせよ、私たちは何のために働き、生きるのかといえば、その最も端的な答えは「自分よりも人の問題を解決すること=他者貢献」にある。
もう少し「モノサシ」的な表現で書き換えるのであれば、「どれだけ家族や他者、社会の役に立てたのか?」。
あるいは、自分の人相や背中、佇たたずまいや立ち振る舞いから「私利私欲を超えた自己超越=他者貢献的な要素がどれだけ滲み出ているか?」ということになります。
具体的にどの分野で、どのような関わり方で「世のため、人のため、家族のため」を追求するかは、自分なりに見出していくしかありません。
その際、原書の表現は「Likeness」ですから、基本的には好きなこと・やりたいことをやっていけばよい。ただし、人生を測る必要条件は、自己実現以上に「自分以外の他者 が登場するか」という自己超越=他者貢献的要素にかかっている。
この点と常に向き合っていく必要があるわけです。
もし、「成長」「自己実現」「キャリアアップ」「昇進・昇給」的な「自己完結系のメジャー=モノサシ」ばかりだったのだとしたら……。
この後すぐに『イノベーション・オブ・ライフ』を買って熟読してください。今回のガイドを補助線にしてもらえば、一生ものの読書体験になると約束します。
『ひと目でわかる! 見るだけ読書』は、パッと見るだけの圧倒的なわかりやすさで、名著の本質が分かる1枚シートに加え、著者の用意した1枚ワークを埋めるだけで、読み返しがいらなくなるほど、名著のエッセンスが一読で身につきます。ぜひ、活用してください。
(本原稿は書籍『ひと目でわかる! 見るだけ読書』の一部抜粋、再編集したものです)