韓国で120万部のミリオンセラーとなった話題書がある。『どうかご自愛ください ~精神科医が教える自尊感情回復レッスン』というタイトルの本だ。精神科医である著者が「自尊感情(≒自己肯定感)」の回復法を指南した一冊である。「些細な事を気にしすぎる」「パートナーとの喧嘩が絶えない」「すぐに人と比べて落ち込む」「やる気が出ない」「ゆううつ感に悩んでいる」など、人々が抱える悩みのほとんどは自尊感情の低下が原因だと本書は伝えている。そして、その回復法を教えてくれる。
本書の日本版から、今回は「自尊感情に影響してしまう“批判”を受け流すための考え方」について触れた内容を紹介していこう。(初出:2021年7月16日)

精神科医が「批判はすべて受け流していい」と言い切る納得の理由【書籍オンライン編集部セレクション】Photo: Adobe Stock

批判は、幼稚な自己防衛にすぎない

 批判されたときには、「これは批判だ」といち早く察知することが重要です。なぜなら、批判は私たちの人生においてほぼ何の役にも立たないからです。

 もちろん、批判されて涙を流して憤った後に、すっきりしてエネルギーが湧くこともあるかもしれません。しかしそれは、泣くことで感情が排出された“浄化”の作用(カタルシス)であり、批判によるものではありません。

 また、批判や悪口は、心理学でいう「投影」であるだけです。何かが起こったときに人のせいにしているだけなのです。投影は未熟な防衛機制の1つです。

 幼い子どもが転んで泣いたとき、親が「うちの子に悪さするなんて、ひどい地面め!」と地面を叩いて見せると、子どもも一緒に地面を叩いて仕返しして泣き止みます。子どもは地面を責めることで一時的に転んだ痛みを忘れるわけです。もちろん子どもが成長すれば、地面のせいにするようなことはなくなります。

 しかし、大人になってストレスを受けたときに、平常心を忘れてしまうほどつらいときは、子どもの頃に使っていた未熟な防衛機制を働かせ、まわりを責めることがあります。脳が一時的に幼い頃に退行したようなものです。

批判は、相手の不安が表れただけだと捉えよう

 このように、他人の弱点や欠点を見つけて批判ばかりするのは、実は自分の心が不安で退行していることを意味します。他人の批判をしても何の得にもなりませんが、自尊感情が低すぎるあまり、心が疲れてそのことに気づくこともできません。

 誰かに攻撃された場合、相手がこちらに自分の嫌な部分を“投影”しているという事実を忘れないようにしましょう。相手が未熟な防衛機制を使った理由は、本人が自らに不快な感情を抱いているからです。責められたほうは、その攻撃に苦しめられて忘れがちですが、実は相手もまた不安で苦しい状態にあるのです。

(本原稿は、ユン・ホンギュン著、岡崎暢子訳『どうかご自愛ください』からの抜粋です)

ユン・ホンギュン
自尊感情専門家、ユン・ホンギュン精神健康医学科医院院長
中央大学校医科大学を卒業し、同大学医科大学院で博士課程を修了。京郷新聞、韓国日報、月刊生老病死などへの寄稿のほか、FMラジオ交通放送「耳で聞く処方箋」などの相談医としても活躍。韓国依存精神医学会、韓国賭博問題管理センター、中央大学ゲーム過没入センター、性依存心理治療協会、校内暴力防止のための100人の精神科医師会などで活動。主に関心を寄せている分野は「自尊感情」と「依存」。初の著書『どうかご自愛ください ~精神科医が教える「自尊感情」回復レッスン』が韓国で120万部のミリオンセラーに。