韓国で120万部のミリオンセラーとなった話題書がある。『どうかご自愛ください ~精神科医が教える自尊感情回復レッスン』というタイトルの本だ。精神科医である著者が「自尊感情(≒自己肯定感)」の回復法を指南した一冊である。「些細な事を気にしすぎる」「パートナーとの喧嘩が絶えない」「すぐに人と比べて落ち込む」「やる気が出ない」「ゆううつ感に悩んでいる」など、人々が抱える悩みのほとんどは自尊感情の低下が原因だと本書は伝えている。そして、その回復法を教えてくれる。
本書の日本版が、ついに7月13日に刊行となる。その刊行を記念して、本書の一部を特別に紹介する。今回は、「自尊感情の低い人の恋愛がうまくいかない理由」について触れた内容を紹介していこう。

なぜか恋愛がうまくいかない人、その意外な共通点とは?Photo: Adobe Stock

自分を愛せないと、恋人を疑い始める

 自尊感情が健全な人には「私は愛されるべき存在だ。だから誰かが私を愛するのは当然だ」という前提があります。この感覚が、愛を持続させるうえで、さまざまな障害から守る傘の役割をしてくれます。

 だから、自分の魅力や価値を信じていない人たちは恋愛そのものが難しくなります。恋人たちが喧嘩する理由も、相手が自分を愛しているという暗黙の了解を疑い始めるからです。「記念日を忘れられた」「約束を破られた」「電話の回数が少ない」など理由はさまざまですが、結論は「きっと愛が冷めたからに違いない」、つまり相手が自分のことを愛しているか確認したいということです。

「あなたのことを本当に愛している。だけど、忙しいときは連絡できないこともある」
「あなたのほうこそ、私を愛しているのならそのくらいは理解してくれてもいいんじゃない?」

 こういったやり取りが何度か続いた挙句、やがて喧嘩に発展します。軽い痴話喧嘩くらいならいいのですが、争いが長引くと、根本的な愛を疑うようになるのが自尊感情が低い人たちが陥る典型的なパターンです。

 このように、自分が愛される存在であることに確信がもてないと、相手を疑うようになります。花を一輪育てるのにもエネルギーと努力が必要なのに、相手からしきりに「私を愛しているの?」と問い詰められたら、我慢できるものもできなくなります。

自尊感情が低いカップルの喧嘩は、重症化しやすい

 自尊感情が低い人たちの言葉の裏には、いくつもの意味が含まれています。たとえば「どうして1時間も遅れたの?」という言葉には、時間が守られなかったことへの叱責だけではなく、その裏に「私が価値のない人間だから簡単に約束を破られたんだろう」とか「私がダメな人間だとバレて愛が冷めたんじゃないか?」といった不信感までが含まれています。

 こうして不安が雪だるま式に膨らんでいくため、自尊感情の低い人は恋人との喧嘩が過激な方向に流れやすいのです。単に遅刻した理由だけに留まらず、二人の愛は永遠に変わらないというところまで説明を聞かないと納得できません。これだけでもかなりのエネルギーを要するので、疲れ切った相手にやがて愛想をつかされてしまうのです。

 自尊感情が低い人は、恋愛中も相手のことに集中できません。代わりに自分のダメな性格、外見、心の傷、愛情の欠乏など、足りない部分ばかりが気になります。恋人との恋愛の問題のように見えますが、実際は自分自身の自尊感情の問題なのです。

(本原稿は、ユン・ホンギュン著、岡崎暢子訳『どうかご自愛ください』からの抜粋です)

ユン・ホンギュン
自尊感情専門家、ユン・ホンギュン精神健康医学科医院院長
中央大学校医科大学を卒業し、同大学医科大学院で博士課程を修了。京郷新聞、韓国日報、月刊生老病死などへの寄稿のほか、FMラジオ交通放送「耳で聞く処方箋」などの相談医としても活躍。韓国依存精神医学会、韓国賭博問題管理センター、中央大学ゲーム過没入センター、性依存心理治療協会、校内暴力防止のための100人の精神科医師会などで活動。主に関心を寄せている分野は「自尊感情」と「依存」。初の著書『どうかご自愛ください ~精神科医が教える「自尊感情」回復レッスン』が韓国で120万部のミリオンセラーに。