韓国で120万部のミリオンセラーとなった話題書がある。『どうかご自愛ください ~精神科医が教える自尊感情回復レッスン』というタイトルの本だ。精神科医である著者が「自尊感情(≒自己肯定感)」の回復法を指南した一冊である。「些細な事を気にしすぎる」「パートナーとの喧嘩が絶えない」「すぐに人と比べて落ち込む」「やる気が出ない」「ゆううつ感に悩んでいる」など、人々が抱える悩みのほとんどは自尊感情の低下が原因だと本書は伝えている。そして、その回復法を教えてくれる。
本書の日本版が、ついに7月14日に刊行となった。その刊行を記念して、本書の一部を特別に紹介する。今回は、「自尊感情の低下につながる無気力状態の脱し方」について触れた内容を紹介していこう。

「やる気が出ない」ときに捨てるべき3つの考えPhoto: Adobe Stock

無気力を放っておくと自尊感情が下がる

 無気力の言い表し方はさまざまです。やる気が出ない、だるい、根気がない、意志が弱い、何もしたくない……。無気力は、自己卑下につながる大きな要因の1つです。放っておくと、自尊感情も低下していってしまいます。

 では、どうするか。急にやる気を失ったとき、多くの人が立ち止まってその理由を突き止めようとし、徒労に終わります。「なぜ自分はこうなってしまったのか?」「幼い頃の心の傷のせい?」「今の仕事が本当にやりたいことじゃないから?」「自分の性格に問題があるから?」「目標がないから?」などさまざまな考えが浮かびます。

 意欲を失くした人の脳は大忙しです。特に右脳が活発に働いています。右脳は深刻な問題、本質的な問題を総合的に思考するからです。結果よりも原因を考え、物事を深読みします。そのため、哲学者や天文学者は右脳が発達していると言われます。

 ところが、この「原因を深読みする」ことがやっかいです。深く考えること自体は悪くありませんが、原因探しは無気力を助長させることがあります。

「やる気が出ない」ときに捨てるべき3つの考え

 また、次の3つの考えにも注意してください。

 まず1つ目が、「意欲を失った原因を取り除けば、再びやる気が出るだろう」と考えることです。意欲の低下や無気力は、転がっていたボールが壁にぶつかって止まったような状態です。壁を取り払っても、ボールが動き出すことはまずありません。

 2つ目は、「面白いと思えれば、再び意欲が湧くだろう」という考えです。何かをやっていて楽しさを見出せなくなることはありますが、何事も上達には同じことの反復が必須です。1つの仕事を長年続けている人たちは楽しさだけで働いているのではありません。望まないことも行い、繰り返すことで上達し、その熟練がもたらす安心感が体を動かす意欲になっているのです。

 3つ目に、「意欲がないと動けない」という考えがあります。人間は意欲のあるなしにかかわらず、行動し、生活できます。意欲とは行動の必要条件ではありません。また、まず行動することで意欲が湧きもします。車のエンジンが掛からないときに、とりあえず押して動かしてみるとエンジンが掛かるようなものです。

 スポーツメーカーや、スポーツ選手が利用する体育館にも行動を促すキャッチコピーが目につきます。ナイキのコピー“Just doit”(行動あるのみ)は有名ですね。あるボクシングジムには“No cry,No complain,Just work”(泣くな、文句を言うな、ただやるだけ)と書かれた横断幕が掛けられていました。行動するためには、必ずしも意欲が先行する必要はないのです。

(本原稿は、ユン・ホンギュン著、岡崎暢子訳『どうかご自愛ください』からの抜粋です)

ユン・ホンギュン
自尊感情専門家、ユン・ホンギュン精神健康医学科医院院長
中央大学校医科大学を卒業し、同大学医科大学院で博士課程を修了。京郷新聞、韓国日報、月刊生老病死などへの寄稿のほか、FMラジオ交通放送「耳で聞く処方箋」などの相談医としても活躍。韓国依存精神医学会、韓国賭博問題管理センター、中央大学ゲーム過没入センター、性依存心理治療協会、校内暴力防止のための100人の精神科医師会などで活動。主に関心を寄せている分野は「自尊感情」と「依存」。初の著書『どうかご自愛ください ~精神科医が教える「自尊感情」回復レッスン』が韓国で120万部のミリオンセラーに。