会社が嫌だと愚痴りながら「ブラック企業からなかなか抜け出せない人」の残念な特徴

「転職してもうまくやっていけるわけがない」「転職は会社への裏切り行為だ」と思い込み、自分の成長に繋がらない職場で働き続けてしまっている……。そんな人は、もしかしたらブラック企業・ブラック上司に洗脳されてしまっているのかもしれません。「職業人生の設計」の専門家である北野唯我さんは、そういった「ブラック企業に捕まりやすい人」には2つの特徴があると語ります。
今回は、20万部突破のベストセラーがマンガ化された『マンガ このまま今の会社にいていいのか? と一度でも思ったら読む 転職の思考法』の発売を記念し、ブラック企業に洗脳されず、自分が活躍できる環境を見つける方法について、話を聞いてみました。(取材・構成/川代紗生、マンガ/松枝尚嗣)

労働時間や福利厚生だけでは見極められない

──「いまの会社を辞めるべきかどうか」の見極めは、簡単ではありません。何を「ブラック企業」と考えるかも、人によって違いますよね。

北野唯我(以下、北野) どんな会社でも、「合う・合わない」はどうしてもありますからね。(労務的に問題がある会社は論外ですが)残業が多い激務の職場が、全ての人にとってブラック企業であるとはかぎりません。裁量が多く自由度が高いからこそ、充実して働けるケースもあります。

──難しいですね。逆に、「最短で成長したい」という人にとっては休みが多く福利厚生が整っていても、スキルアップに繋がらなかったら「いい会社」とは言えないでしょうし。

北野 はい。ただ、「少なくともこの条件を満たしている場合は、ブラック企業・ブラック上司の可能性が極めて高い」と思われる見極めのポイントがひとつあって。

──何を見ればいいのでしょうか。

北野 「重要な約束が守られているかどうか」です。たとえば『マンガ 転職の思考法』では、主人公の奈美は入社当初から「海外事業部で働きたい」と伝えており、上司も「君を推薦しておく」と伝えていました。

北野 しかし、結局約束は果たされないまま7年目になり、いよいよ海外事業部拡大のチャンスがやってきても、時すでに遅し。上司に約束を守る気がないことに気がつき、30歳を目前にしてようやく、奈美は危機感を抱くようになりました。

──奈美はそこから「転職の思考法」をとりいれて転職活動し、キャリアアップに繋げられましたが……。たしかに、「会社が約束を果たしてくれるはず」と信じて待ち続け動かずにいると、手遅れになる可能性もありますよね。

北野 だから、「あと1年、我慢したら希望の部署に行かせてあげるよ」とか、「新規事業の担当にさせてあげるよ」とか、今後のキャリアにつながるような重要な約束が守られていない場合、「ブラック企業」「ブラック上司」である可能性が高いんじゃないか、と私は思っています。

ブラック企業に「洗脳」されやすい人の2つの特徴

──ブラック企業に染まってしまい、正常な判断ができなくなる人もいますよね。ある種の洗脳状態と言いますか……。どんな人がブラック企業に捕まりやすいのでしょうか?

北野 洗脳されやすい人の特徴は、2つあると思っていて。

 一つは、責任感の強い人。責任感をくすぐられると、「自分が間違っているのかな」と感じてしまうんですよね。いまの職場や役職を放棄することを「悪」ととらえてしまう。

 もう一つは、行動ではなく言葉を信じてしまう人。つまり、上司や会社の「言ったこと」ばかり信じて、行動を見ようとしない人です。ブラック企業から抜け出せない人って、「1年がんばったら〇〇の仕事をさせてあげるよ」といった言葉による約束を純粋に信じてしまうんですよね。

──そういえば奈美も、転職活動がすすんでほぼ退職の決意を固めていたはずなのに、上司からよりよいポジションを提示されて気持ちが揺らいでしまいましたよね。

会社が嫌だと愚痴りながら「ブラック企業からなかなか抜け出せない人」の残念な特徴
会社が嫌だと愚痴りながら「ブラック企業からなかなか抜け出せない人」の残念な特徴『マンガ転職の思考法』143-144ページより

北野 本のなかでも「引き留めにあったときのための思考法」を書きましたが、こういうのって口約束にすぎないことがほとんどなので、実現されるかどうかはわからないんです。

 あれこれと理由をつけてうやむやにされてしまう可能性も大いにありえます。部下が辞めてしまうと上司自身の管理能力を問われるので、自己保身のために一時的に引き留めをしているに過ぎないケースも考えられる。社員の側としても、注意が必要ですね。

会社が嫌だと愚痴りながら「ブラック企業からなかなか抜け出せない人」の残念な特徴北野唯我(きたの・ゆいが)
兵庫県出身。神戸大学経営学部卒。就職氷河期に博報堂へ入社し、経営企画局・経理財務局で勤務。その後、ボストンコンサルティンググループを経て、2016年、ワンキャリアに参画。子会社の代表取締役などを経て、現在、ワンキャリア取締役。テレビ番組や新聞、ビジネス誌などで「職業人生の設計」「組織戦略」の専門家としてコメントを寄せる。著書に『このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む転職の思考法』『OPENNESS 職場の「空気」が結果を決める』(以上、ダイヤモンド社)、『天才を殺す凡人』(日本経済新聞出版社)などがある。最新刊は『マンガ このまま今の会社にいていいのか?と一度でも思ったら読む 転職の思考法』
会社が嫌だと愚痴りながら「ブラック企業からなかなか抜け出せない人」の残念な特徴