武田薬品工業のロゴ「第2の東芝」も見えてきた Photo:123RF
*本記事は医薬経済ONLINEからの転載です。

 武田薬品が22年3月期業績を発表した5月11日、業界雀たちの間ではこんな囁きが交わされた。

「いまの武田が株主を納得させるために切れるカードは、やはり、配当だけということね……」

 同社の前期の売上高は、主力の潰瘍性大腸炎治療薬「エンティビオ」などの伸長で3兆5690億円と過去最高を記録した。営業損益以下は揃って減益となったものの、これは21年3月期にあった事業売却益が消えた一方で、研究開発費が増えたことが主因とされる。クリストフ・ウェバー社長は「力強い業績を報告できた」と述べたうえで、「当社が進んでいる道への自信を深めています」と胸を張った。だが、注目されたのは好決算より、株主還元だった。

 決算発表の席上、財務を取り仕切るコスタ・サルウコスCFOは「負債を迅速に削減し、株主還元を継続します」と語った。4.3兆円に上る有利子負債をものともせず、年180円の大盤振る舞いを今後も堅持すると改めて表明したのだ。5月12日に一時下落した株価も、翌13日には復調した。