役職定年の悲哀#9Photo:PIXTA

国内製薬会社で製薬関連売上高トップ3の武田薬品工業、アステラス製薬、第一三共。しのぎを削る3社は、役職定年制度の有無に経営スタイルや社風が表れている。もっとも、役職定年後の給料でも1300万円を超えることがあり、「高給」は健在だ。特集『中高年の給料激減!主要企業のデータ初公開!大企業の5割導入 役職定年の悲哀』(全17回)の#9では、製薬業界のシニア高給事情を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

平均年間給与「1000万円超え」の
武田薬品、アステラス、第一三共

 製薬業界は、革新的な医薬品を生み出すこと、つまりイノベーションが最重要視される。そしてイノベーションに対して価格が付き、社員の報酬に跳ね返る。要するに、高給取りとなる。

 ただし希望退職者募集の頻度が高く、人材の流動性は高い。リストラでなくとも、平時から競合他社にキャリアアップの道を求める“業界渡り鳥”も少なくない。

 さて国内の製薬関連売上高トップ3の武田薬品工業、アステラス製薬、第一三共は、いずれも平均年間給与(単体ベース)が1000万円超であり、製薬業界の中でも特に高給の企業として知られる。

 業界をあまり知らない人へ“3社のキャラ”をご紹介すると、武田薬品は報酬18.5億円のクリストフ・ウェバー社長兼CEO(最高経営責任者)の下、近年急速にグローバル化を進めた「イケイケ」タイプ。アステラスも報酬4.5億円の安川健司社長兼CEOの下、武田薬品ほどではないが大胆な組織変革を遂げた「準イケイケ」タイプ。なお両社は開示、非開示を問わず、近年頻繁にリストラを行っている。また特に幹部クラスで人材の流入、流出が目立つ。

 一方、第一三共は前の2社と比べると、「おっとり」タイプ。年功序列的な組織運営など、日本的かつ保守的な姿勢が色濃く残る。眞鍋淳社長兼CEOの報酬は3.4億円と抑え気味で、報酬面では比較的フラットな組織となっている。人材の流動性は前の2社と比べれば目立たない。

 いずれにしても3社に共通するのは「高給取り」ということ。であるならば、「役職定年制度」の有無や、給料の減額幅も気になるところだ。役職定年とは一定の年齢になると役職を解かれ、多くは部下なしとなり年収が2~3割の大幅減となる制度。

 一般的にも“強制的な大幅報酬ダウン装置”と恐れられているが、製薬業界はベースの給料が大きいだけに、さらにインパクトは大きくなる。

 3社の役職定年事情はどうなっているのか。実は、そこにも“キャラ”が表れていた。ある会社では年収が400万円も激減する場合もある。一方、別の会社では役職定年制度はないが、よりシビアな現実が待っていた……。次ページから、どのようなタイプなら年収が下がらないかも含めて、具体的な金額とともに明らかにしていく。

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