医薬経済ONLINE
自民と維新の「連立政権合意書」において社会保障政策で真っ先に打ち出したのが、OTC(大衆薬)類似薬を含む薬剤自己負担の見直し、金融所得の反映などの応能負担の徹底である。社会問題化している病院と介護施設の経営難への対応も明記している。2025年度補正予算と、診療報酬・薬価改定が絡む26年度予算編成の動向を占おう。

新政権の誕生により、創薬戦略でも「高市カラー」が出る。10月24日に初の所信表明演説に臨んだ高市早苗首相は創薬という言葉こそ使わなかったが、「健康医療安全保障」の項目を設け、女性特有の疾患対策にも触れた。健康医療安全保障は自民党総裁選で掲げた公約のひとつで、ほかにも原薬生産の国内完結体制やCBRNEテロ(化学・生物テロ)対策が含まれる。要するに製薬企業にも「国防」が求められるということを意味する。

東京グロース市場に上場するバイオベンチャー「ハートシード」は9月30日、開発中の再生医療技術について、提携先のノボノルディスクから解約の通知を受け取ったと発表。株価が急落して3日連続でストップ安となった。バイオベンチャーの市場での脆さが露呈した。

米コダックと対比される、富士フイルムホールディングスの秀逸ぶり。古森重隆元会長の名経営者ぶりが日本のメディアでは頻繁に報じられる。しかし、それは本当に揺るぎないファクトなのだろうか。同社がヘルスケア分野で最も自信を持っているように見えるバイオCDMO(医薬品開発製造受託)事業についても、予断を排して眺めると、決してバラ色の未来ではないことが浮かび上がる。

経済成長を優先する「積極財政派」で知られる自民党の高市早苗氏が首相の座に就くことで、薬剤費を含む医療費に対して、パイが膨らむことに“寛容”な政権となるのか。

日医工、共和薬品工業、T’sファーマを抱える「アンドファーマ」は後発(ジェネリック)医薬品業界再編の有力な軸と見做され、今後どの企業が合流するのかと業界関係者の耳目を集めていた。「総合商社ほど製薬と相性が悪いものはない」が通説だったが、資本参加に名乗りを上げた社の一つは伊藤忠商事だった。

医療機器大手のテルモは8月、英国の新興医療機器メーカー・オルガノックスを約2200億円で買収すると発表した。テルモはオルガノックスを橋頭堡として臓器移植領域に進出する。ただテルモの経営を俯瞰した場合、焦点となるのは大型買収の成否よりもむしろ、連結売上高の8割弱を占める海外事業、なかんずく米国と中国ビジネスの行方である。

元武田薬品工業CFO(最高財務責任者)、コスタ・サルウコス氏が9月1日付で、田辺三菱製薬の取締役会長に就任した。武田薬品を去ってわずか1年での日本復帰。米投資ファンドのベインキャピタルに買収された田辺三菱ということで、武田薬品の元社員からは「田辺三菱もコストカッターの餌食か」と心配されている。

日本調剤がアドバンテッジパートナーズからの約1178億円のTOB(株式公開買い付け)に応じるなど、調剤市場が大再編のうねりにある。大再編後の勝者はどこか。実は「三つの条件」をクリアできる企業こそ再編後の勝者となる。

日本で人工妊娠中絶薬は普及しないのかーー。2023年に登場した日本初の人工妊娠中絶薬「メフィーゴパック」だが、累計9800箱(25年7月)しか販売できていない。喧々諤々の議論を経て発売された新薬だが、売り出した英ラインファーマの台所事情は厳しい。

「元気」なのがモノ言う株主の異名で語られるアクティビストの連中である。上から目線でお小言を並べる姿勢に違和感を覚える向きも少なくないが、指摘を受けるJTC(ジャパニーズ・トラディショナル・カンパニー)の方も褒められる経営に徹しているわけではないため、判官贔屓の対象とはなりにくい。この間隙をうまく利用して大暴れしているという構図だ。

時価総額で業界首位の中外製薬は7月、早期臨床開発段階にある自社創製5品目の自社開発中止を発表した。これだけの数のドロップについて、奥田修社長は「知る限り、中外史上初」と、異例の経営判断だということを滲ませた。もっとも中外ウォッチャーに衝撃を与えたのは数だけでなく、その中身にもあった。

6月にロート製薬の社長が交代した。同社をめぐっては、英投資ファンド「アセット・バリュー・インベスターズ」が4月からキャンペーンサイト「ロート製薬の目を覚ます」を立ち上げ、経営の体制や方針の見直しを迫っている。新社長は創業家である会長の意向を汲みながら物言う株主の要求をどのように捌くのか。

2025年の武田薬品工業の定時株主総会で、クリストフ・ウェバー社長CEO(最高経営責任者)ら役員の賞与支給について賛意を示した株主は67.41%だった。株主の3人に1人が役員賞与の水準が「おかしい」と表明したことになる。

参院選の結果を受け、目を回している業界がある。「OTC(大衆薬)類似薬の保険給付除外」に怯える外用剤(湿布薬、花粉症薬、塗り薬など)メーカーだ。ただでさえ自民党・公明党・日本維新の会の三党で、給付除外を検討していくことで合意済み。参院選で急伸した参政党や国民民主党も給付除外に前のめりとあって、汗が止まらない状況だ。

損害保険大手「東京海上ホールディングス」の子会社である東京海上ウェルデザインが動物病院向けに「医薬品等共同購買サービス」の提供を始めると発表した。流行るのか否か、誰が得をするのか。

来年6月に国内製薬トップ、武田薬品工業の社長が交代する。2014年の就任から10年を超すクリストフ・ウェバー氏(58)が退任し、代わってジュリー・キム氏(55)が就任する予定だ。キム氏はどのような人物なのか。そして社員が気を揉むウェバー氏の「総仕上げ」はどのようなものになるのだろうか。

「物言う株主」が製薬各社の旧態依然とした経営ぶりを次々と白日の下に晒していっている。外圧を受けないと変われないというのはニッポンの宿痾であるが、そうした株式市場のハイエナたちに“可愛がられる”のは、もしかすると幸運かもしれない。

後発品企業が身の振り方を迫られている。Meiji Seikaファルマとダイトは6月、複数の後発品企業による「新・コンソーシアム構想」実現に向けた協議を開始したと発表した。厚生労働省が24年に号令を出した「業界再編」がようやく表立って動き出した形だ。再編には同構想を含め、大きく4つの軸ができる見通しだ。

武田薬品工業のクリストフ・ウェバー社長が辞意を表明し、同社が2019年に巨額で買収したシャイアー出身のジェリー・キム氏が26年6月に新社長となる。「武田薬品初の女性トップ」との触れ込みだが、社内に期待感は乏しい。なぜか。
