日本においてもなかなか決定的な治療法のない病気として知られている「認知症」。最近、その認知症の治療や改善療法の指導を上海で行なっている日本の団体に出会った。今後の日中関係の1つのあり方を象徴しているものと思われるので、今回紹介したい。

上海で広がる
日本の認知症改善メソッド

 認知症は決定的な治療法がないと言われ、本人のみならず周囲をも苦しめる病気だ。認知症にかかった老人が夜に徘徊をしたり、少し前にしたことを忘れてしまったり、と自宅で介護する場合は、家族に相当な負担を強いることになる。それが原因で家族が老人を殺害してしまうという悲劇も起きていることは、報道などから読者もご存じのことであろう。

 ところが日本において、その認知症の予防、改善に効果をあるメソッドを開発した人がいる。開発し普及活動を図っているのは、NPO法人日本心身機能活性療法指導士会の小川眞誠氏である。

 これは医学的に証明された療法ではなく、いわゆる民間療法というのであろうが、すでに日本を中心に中国上海市・台湾・韓国・シンガポール等で、5000名を超える心身機能活性療法指導士(ゲーゴルセラピスト)が指導士会の認定を受けた指導士として、認知症の改善と予防のための活動を行っている。また、認知症ばかりでなく、アルツハイマー病及び脳性麻痺などの症状にも効果が認められている。

 中国上海では、2002年から指導士の養成を始め、すでに、300人を超える指導士が上海の老人福利施設でこの療法を実践している。

 上海での活動の特徴は、政府機関である上海市民生局及びその傘下にある同業協会である上海福利業協会が全面的にバックアップし、上海市内の老人施設並びに脳性麻痺の子供を介護する施設と連携して普及に努めていることにある。現在上海市内15余りの施設で日常的に同療法が実践されており、これまでに6回の改善事例成果発表会を行い、370例あまりの改善事例が発表された。

 具体的には、上海福利業協会が指導士育成会を主宰し、小川先生と指導士会の上海代表の徐雁氏が指導をするという形で行っている。費用は、指導士を目指す介護士を派遣する老人施設が負担しているが、一部は、上海市の慈善会からの寄付によって賄っている。それでも小川先生と徐雁氏は、ほとんど手弁当の状態で7年間続けているので、今後より一層の普及を図るために、私も一肌脱いで、在上海の日本企業などにも寄付を募ろうかと考えているところだ。

 具体的な療法は、ご興味ある方はNPO法人日本心身機能活性療法指導士会のホームページをご参照いただきたいが、簡単に説明をすると、運動療法と記憶回想療法を組み合わせたものである。私も実際に上海での指導士会の養成コースに飛び入り参加してやってみた。手の甲を温めて指の運動をすることから始め、体全体を動かして温めながら、平衡感覚を養う運動が有り、いかにも少しずつ体と神経のつながりを促してゆくような療法であった。