都知事選で脱原発候補が負けるや、一気にエネルギー基本計画の閣議決定、原発再稼働への流れが強まったように感じる。事実、安倍晋三首相は投開票日の翌10日には国会で再稼働への積極姿勢を示した。

 では脱原発の流れが失速したのかというとそうではない。むしろ今回の選挙を経て一段とその勢いは強まった印象を受ける。

 実際、宇都宮健児候補と細川護煕候補の得票を合算すると舛添要一候補の得票に迫っている。

 脱原発候補の敗因は、大雪による低投票率や一本化不成立などさまざまな要因が指摘されている。もちろんそれらは大きな影響を与えたが、私が特に強調したいのは次のことである。

私が考える脱原発候補の敗因

 舛添候補の「私も脱原発」との発言によって、有権者の多くが、それでは細川、宇都宮候補と大差ないと受けとった。 

 新宿で小泉純一郎元首相の街頭演説を聞いていると、そばにいた中年男性が口に手を当てて「舛添も脱原発だぞ」と大声で叫んだ。すると私の隣にいた若い女性2人が顔を見合わせて「あっ、そうなんだ」とつぶやいた。

 舛添候補は、「原発に依存しない社会をつくる」と演説。「再生可能エネルギーを6%から20%にする」「将来的な廃止を目指す」とも言った。 

 こうして有権者から見ると脱原発の有力候補は3人いることになった。そうすると、脱原発の3候補の中から、福祉やオリンピックに力を入れそうな人を選ぶということになる。だから新聞の調査では原発を「徐々にゼロにする」ことを望む人の半数以上が舛添氏に投票した。 

 それだけではない。この舛添氏の姿勢によって、自民党の若手議員が、他候補、特に細川候補を支援する大義が奪われたのだ。さらに、このことが低投票率となった一因と私は考えている。 

 しかし、舛添新都知事は勝利を宣言したときにこう述べた。 

「原発依存体質を少しずつ減らすのは重要だが、国との調整も必要」 

 早くも軌道修正か。近日中と言われる原発重視の「エネルギー基本計画」の決定に際し都の主張を示し、具体的な成果を盛り込まねば公約違反とも言われかねない。