「他人事とは、とても思えない」

 こう悲痛に訴えるのは、15年ほどにわたる引きこもり生活を送ってきたAさん(45歳)。

「結果的に母親殺害という結果になってしまった息子さんの気持ちを思うと、気の毒過ぎます」

現実から逃げ出したかった?
無理心中を図るも母親だけが死亡

 Aさんが指摘しているのは、都営アパートの一室で木炭を燃やし、80歳の母親を一酸化中毒で殺害したとして、4月5日、東京都墨田区に住む45歳無職の次男が逮捕された事件。この次男は、警察の調べに対して「無理心中しようとしたが、自分は外に出て死にきれなかった」と供述しているという。

 Aさんは、こう顔を曇らせる。

「報道ではわからなかったけど、母親が80歳っていうことは、すでに介護が必要だったということも考えられます。息子さんは、自分と同い年の45歳。身体のいろいろなところが悪くなってくる。母親も老いてきて、世の中とのつながりが何もなかったとしたら、そりゃ、将来を悲観したくもなります。この現実から逃げ出したくて、一緒に死のうとしたのではないでしょうか」

 実際、翌6日付の東京新聞によれば、容疑者の次男は、50歳代の会社員の兄とも同居していたが、事件当時、仕事のために外出中で、次男は兄とともに母親の介護をしていた。しかも、今年に入り、同様の方法で2度にわたり、「心中を試みた」と話しているという。

「年がら年中、年老いた母親と一緒に家にいたら、おかしくもなります」

 そう自らの状況と重ね合わせるAさんも、ずっと母親と2人暮らしを続けてきた。