世界最大手のエグゼクティブサーチ会社コーン・フェリー・インターナショナル社で20年、日本支社の社長、会長に加えて米国本社取締役も務めた橘・フクシマ・咲江氏。2008年1月発行のビジネスウィーク誌で「世界で最も影響力のあるヘッドハンター・トップ100人」に唯一の日本人として選ばれており、現在は三菱商事、味の素、J・フロントリテイリング、ブリヂストンなどで社外取締役を務める。そんなフクシマ氏に人材業界のあるべき姿、日本の雇用の未来やキャリアの築き方についてお話を伺った。

日本語教師からエグゼクティブサーチへ

ヘッドハンターとはどんな仕事かたちばな・ふくしま・さきえ
G&S GlobaIAdvisorsInc.代表取締役。1949年、千葉県生まれ。清泉女子大学卒業、国際基督教大学大学院日本語教授法研究課程修了。ハーバード大学教育学修士、スタンフォード大学経営学修士。ハーバード大学日本語教師、ペイン・アンド・カンパニーを経て、1991年、日本コーン・フェリー・インターナショナルに入社。1995年から2007年まで同社米国本社取締役を兼務。日本支社長、同会長を歴任。2010年から現職。現在、ブリヂストン、J.フロントリティリング、味の素、三菱商事等の社外取締役。経済同友会副代表幹事。2008年に「ビジネスウィーク」誌の「世界で最も影響力のあるヘッドハンター・トップ100人」に唯一の日本人として選ばれる。

南 フクシマさんがエグゼクティブサーチ(人材紹介業)の世界に入ったきっかけを教えてください。

フクシマ 実は私、もともと日本語の教師を一生の仕事にしようと思っていました。ICUの大学院で小出先生という日本語教育の開拓者であり指導者である方に師事していたので、夫(元エアバス・ジャパン代表 グレン・S・フクシマ氏)がハーバードの大学院に行くことを決めたとき、ごあいさつに伺いました。すると「ハーバードで働く教え子から日本語の先生を紹介してほしいと言われているんだけど、あなた行かない?」と誘われて。二つ返事で行くことを決めました。ハーバードで日本語を教えていたころは、大変でしたが、「この仕事は天職だ」と思うほど教えることが好きでした。

南 運命ですね!

フクシマ その後、教え子から「知人が働いているコンサルティング会社で、日本語ができる人を探している」と声がかかり、そこで初めてビジネスの世界に飛び込みました。夫にも「やってみないと分からないし、きっと向いているよ」と言われて。実際、今までのアカデミックな世界とは違う面白さがありました。

南 その後、スタンフォードでMBAを取得されたのですか?

フクシマ そうです。父親も学者で、ビジネスに縁のない世界で育ったのですが、コンサルティングはアカデミックとビジネスの中間だということに気づいたのです。分析をして、提言をして、クライアントに説明をして。共通点が多くて面白いと思いました。ただ、私には経験がないので、どうしたら一番早くビジネスを体系的に勉強できるかを考えたとき、辿り着いた答えがMBAだったのです。