優秀なビジネスパーソンは
男女両方の視点を兼ね備えている

 本連載「黒い心理学」では、ビジネスパーソンを蝕む「心のダークサイド」がいかにブラックな職場をつくり上げていくか、心理学の研究をベースに解説している。ただ、今日のトピックは「ダークサイド」というよりは、むしろ相互無理解といった方が正しいかもしれない。

行動科学・脳科学でみる男女脳 <br />この違いをビジネスで生かせるか「女性をどれだけ管理職に登用するか」ばかりを考えていても、真のダイバーシティ・マネジメントにはつながらない。男女の違いを正しく認識し、男女両方の視点を持つことができるだろうか

 グローバル化が進むにつれ、ダイバーシティ・マネジメントの重要性が増している。ダイバーシティとは「多様性」を意味する。

 ダイバーシティ・マネジメントとは人種、性別、宗教、価値観、慣習などの違う人々が、ともにビジネスを行うためのソリューションを考えることであり、もっと進んで、そのようなダイバーシティを「強み」としてマネジメントに応用するにはどうすべきかを考えることでもある。

 海外と比較すると、一部を除けば、日本企業の多くは、まだ多様性は低い。だが、これからの時代を考えるにあたり、多様性を考慮したマネジメントに取り組んでいかなくてはならないのは明白だ。

 多様性を考えるとき、例えば欧米ならば、人種、性別、宗教が主となるが、日本では、まず性別がダイバーシティ・マネジメントの最初の課題となるだろう。現政権でも、女性の社会進出率を上げることを目標としているし、シングルマザーや独身の女性が増えているトレンドを考慮すると、女性をいかにビジネス戦力として活用するかについて真剣に考える必要があるだろう。

 だが、日本の組織は「女性を活かす」マネジメントについて、まだ多くのアイディアが必要だと筆者は考えている。なぜなら、このような議論になると、まず「いかに積極的に女性を管理職に登用するか」という短絡的な話に矮小化されてしまうからだ。

 その前に、女性と男性の意思決定の違いや、得手不得手について、科学的な知識を踏まえて吟味し、仕事の内容やモチベーションの維持について考えた上で、人事制度の改革も含めて議論するべきだろう。

 だが、実際には「女性は管理職に向かない」「女性のほうがモチベーション維持が難しい」などの偏見が、特に一定年齢以上の男性に根強いのも事実だ。そうした男性は、「女性の視点」をくみ取ることができない。

「女性の視点」をくみ取ることができる男性は、女性に適した職や仕事内容をアサインすることに長けている。少なくとも筆者の出会った「若くて優秀」なビジネス―パーソンは、女性男性に関わらず、男性的視点と女性的視点の両方を兼ね備えている。