経営陣関与の可能性が濃厚に
不正発覚時の“高いコスト”

東芝が不正な“チャレンジ”に走った理由Photo by Takahisa Suzuki

 ここへ来て、東芝の不適正な会計処理をめぐる問題が一段と注目を集めている。調査が進むにつれ損失先送りの規模が拡大し、5年間の利益修正額は約1600億円に上ると報道されている。

 それにも増して驚かされるのは、不適切会計は特定分野での出来事ではなく、同社の多くの分野で行われていたことだ。それが事実とすれば、経営陣が関与していた可能性が高い。経済専門家の中には、「東芝経営陣の対立などを考えると、やはりそうだったか」と指摘する声もある。

 東芝では田中久雄社長、佐々木則夫副会長、西田厚聡相談役の歴代3社長が辞任、取締役の半数が辞任する経営陣の大幅刷新が行われる。それに伴い、証券取引等監視委員会は、処分として課徴金を課すよう金融庁に勧告する方針だ。

 不適切な会計処理によって損失を隠蔽したり、利益を膨らませる手法は、わが国だけではなく米国などでも数多く発生している。

 例えば、2001年には、米国の大手エネルギー関連企業だったエンロン社の不正会計が発覚し、最終的に同社が破綻に追い込まれ、金融市場などに大きな悪影響を与えることになったことは印象に残っている。

 そうした事態の発生を防ぐため、米国ではコーポレートガバナンス=企業統治の重要性の認識が高まり、企業の不祥事に対する罰則規定を強化するサーベンスオックスレー法(SOX法)が制定された。

 今年、わが国でもコーポレートガバナンス・コードが導入され、企業統治に対する考え方が整理されつつある。ただ、社外取締役の導入など体制だけ整えただけでは、今回のような不祥事は減らない。本当の解決策は、経営者自身が隠蔽工作が発覚した時の高いコストを認識することに尽きるのだろう。