ハイブリッド車の複雑なシステムが呼び起こす相次ぐリコール、グローバルな部品メーカーの致命的な欠陥、サイバー攻撃や内部不正による情報流出の問題…。企業は新たなリスクに直面している。2014年企業を襲ったさまざまな事件をダイヤモンド・オンラインの記事から振り返る。
【製造業編】
異常値を見抜けないから
何度もエラーが繰り返される
2014年も企業の不祥事、事件が数多く起こり、報じられた。
とくに、今年目立ったのは、1つの製品や現場で繰り返される事故や不良だ。
ホンダは2013年9月に発売した3代目「フィット」について、昨年中に2回、今年に入って3回の計5回リコールを届け出た。1つの車種について、発売直後からこれだけ立て続けにリコールが相次ぐのは前例がない。基幹車種としての期待を大きく裏切る結果となり、2014年度のホンダ全体の販売目標の下方修正にまで追い込まれた。
フィット(GP5型)に採用されたハイブリッドの方式は、従来ホンダが採用していたエンジン主体の機構とは異なり、エンジンとモーターを組み合わせて大きなパワーを出したり、モーターのみで走行して燃費を稼ぐことができるなど、非常に複雑なメカニズムを採用している。ホンダとしてこれまでにない新しい部品を組み合わせて世に出す挑戦ではあったが、「詰めが足りない」批判を免れない結果に終わった。なにより、新型車に期待して発売早々購入したホンダファンを、大いに失望させたことは想像に難くない。
このハイブリッド方式をホンダと共同開発した部品メーカー、独シェフラーのグッツマーCEOは、「週刊ダイヤモンド」の取材に対して「開発段階で隠していたことは一切ない」としながらも、ホンダと共に早期解決にあたることを明言した。(『シェフラー副CEO兼最高技術責任者(CTO)ペーター・グッツマー ホンダ・フィットの開発は挑戦 日系メーカーとの協業を増やす』 )
エンジン単体からハイブリッド時代へという、自動車のシステムの複雑化がリコール多発の原因の1つなのは間違いないが、もっと根深い問題を指摘する専門家もいる。DOLで連載【日の丸製造業を蘇らせる!“超高速すり合わせ型”モノづくりのススメ】を執筆する松本晋一氏だ。
松本氏は、企業が進めてきた「リストラ」に原因があるとする。
「大企業の中で、“想定外”の事態に部署間を調整する役割を担ってきたミドル層の存在が、実は非常に重要でした。しかしその能力はなかなか数値化ができないものです。リストラとは曖昧さをなくして組織を理詰めで再構成することですから、そうしたミドルは評価されず、この10年で多くが会社を去りました。あとに残った組織は、レゴブロックのように硬直化し、イレギュラーな事態に対応できないものに変容していたのです」