株式投資の材料としては
「ネガティブ情報」こそが興味深い

Photo:Takahisa Suzuki

 はじめに断っておくが、筆者は東芝(コード番号6502)の株式に投資することを読者に勧める意図は全くない。投資家読者は、東芝株を買うのも、売るのも、放っておくのも、自分で好きに決めていただきたい。ただ、今後の東芝株の推移を見ないでいるのは「もったいない!」のではないかとだけ申し上げる。本稿では、東芝株の今後の「見所」について考えてみたい。

 なお、東芝の今回の「不適切会計」(メディアでは強制捜査が入るまでは「粉飾」という言葉は使わないものらしい)は、相当に悪質で根の深いものである可能性が大きく、また巷間、同社には深刻な人事的対立があるとも聞く。経営問題として、社会(会社)観察の事例として、個人の善悪の問題として、また、あるべきルールの問題、など、多くの注目点と論点があるが、今回は、こうした問題や価値判断から離れて、株式投資の問題としてのみ東芝を扱う。

 さて、筆者の個人的な感じ方かもしれないが、東芝の不適切会計の報道は、株式投資にあってチャンスであるかもしれない事例として、ワクワクするようなニュースだった。

 個別の株式に対する「材料」としては、期待の新製品の発表やビジネスの好調を知らせるような「ポジティブな情報」と、企業の不祥事・事故の発生のような「ネガティブ情報」の2種類がある。チャンスとして注目のしがいがあるのは、多くの場合、「ネガティブ情報」の方なのだ。

 ポジティブ情報にあっては、企業にとって今後どれくらいの利益に繋がるのかがクリアに分からないケースがほとんどだ。有望な新製品や新技術などが、企業の利益におそらく繋がるだろうという期待はできても、将来の利益にどれだけ反映するかの評価は極めて難しいことが多い。

 一方、ネガティブ情報の場合、その情報のインパクトをある程度、数値化できる場合が多い。