授業風景
日本語と算数、中国語を主に学ぶ。小3~4になると中学受験塾に移る子どもが多い 写真提供:バイリンガル放課後クラブwings
画像 付立華

付立華(ふ・りか)
バイリンガル放課後クラブwings代表

 

青海省生まれ。12歳から上海市に移り、中国・華東師範大学(上海市) 卒業。中学校で国語(中国語)教員を務めた後、2001年に来日。お茶の水女子大学大学院比較社会文化学専攻博士課程修了。お茶の水女子大や山梨大で中国語を教え、7年前に「バイリンガル放課後クラブwings」(埼玉・川口市)を設立した。

 

 

開成・桜蔭・豊島岡に20人弱、筑駒5人進学の衝撃

――付さんが、中国人家庭の中学受験の実態をご存じということで、今日はお分かりになる範囲でお話を伺えればと思います。まず、2024年中学入試はどのような状況でしたか。

 私の知る限りですが、最難関中学に合格して進学している中国人家庭のお子さんは、男子校では開成に20人弱、筑波大学附属駒場に5人、女子校では桜蔭と豊島岡女子学園がそれぞれ18人ほど、浦和明の星女子に9人、共学校では地元の栄東に20~30人は通っていると思います。大宮開成も多いですね。慶應義塾中等部は高倍率で面接もあるためか、1人しか確認できていません。

――中学受験生全体に占めるだろう中国人受験生の割合からすると、親が高学歴ということを考えても、すごい実績ですね。募集定員から見ると、桜蔭や豊島岡は8%前後、開成は7%弱、筑駒は4%を占めるわけですから。なぜそうした情報が付さんに入るのでしょうか。

 7年前から、「子どもたちが中国語を覚える環境がほしい」という親の声に応えて始めた中国人中心のアフタースクールを運営しているからです。海外には日本人学校がありますが、日本国内には中国人児童の総合的な補習校が少ないのです。日本生まれの子どもたちは、家庭で中国語を話せても、読み書きができません。一方、日本語も語彙(ごい)が足りず、単語の意味を正確に理解できず、国語苦手の中国籍の子どもが多い。この子どもたちに中国語の読み書き、国語(日本語)と英語を教えています。近年中学受験の子どもが多いため、算数の指導も行っています。

――補習校も兼ねた中国人向け学童施設というわけですね。

 午後8時まで延長可能でお子さんを預かります。日本語や中国語の他、英語や算数(暗算学習)や絵画などさまざまなプログラムがあり、200人ほどが在籍しています。

――日本語、中国語、英語のトリリンガル教育ですか。

 実際に3カ国語を学べて、難関中学に合格できるような子は偏差値70クラスです。中国語をこの学校で2~3年学べば、中国政府公認で最も受験生の多い中国語検定HSK(1級から最上級6級まであり、日本国内でも年間4万人ほどが受験)4級に合格できます。毎年2~3人は、算数でもトップクラスの子がいます。

――こちらに通っていた生徒が中学を受験するわけですね。

 3~4年生から中学受験塾に入る子が多くいます。最近まで住んでいた浦和のマンションの中国人家庭は、全員が中学受験していました。日本の事情がよく分からないことと合格実績に引かれて、塾ならまずサピックス、早稲田アカデミー、受験するのは偏差値の高い学校となりがちです。

――埼玉県内では最も中学受験が盛んなエリアとはいえ、それはすごいですね。

 これまでいろいろな家庭の中学受験の様子を見てきましたが、もっと子どもに合わせて考えた方がいい。私が、「お子さんは中学受験ではなく、高校受験の方がいい学校に行けますよ」と言っても、なかなか親は冷静に聞いてくれません。

 「公立校の教育はダメだから」と、中学受験をするようあおるような人も出てきています。学力上位層は別として、平均より下の子は公立校で自信を付ける方がいいと思います。