走りながら考え、失敗を恐れない

――聖光の新型コロナ対応の遠隔授業はお見事でした。

工藤 4月から6月第1週まではウェブを活用してやりました。ただ、中学生や高校生にはやりたくないことをやらせている。みんなが目を輝かせて授業を受ける、そんなの嘘ですよ。会社の会議とか、趣味の講座というのなら話は別ですが、学校の授業をやっても、やらない子はやらない。自分の映像を外し、ヘタをしたら音声も切っている(笑)。

 結果的に、学習の定着度は高くない。学ぶというStudyの部分と生活というSchool Lifeの部分は違うじゃないですか。学校にはその両方がないといけない。必ずしもオンラインだけで豊かな教育をすることはできないなと、実感を持って分かりました。

――今回再び緊急事態宣言が発令されましたが、どのように思いましたか。

工藤 対面授業をできるだけ継続するにはどうしたらいいかを考えました。とはいえ、オンラインは日常の中で活用することです。うちはG Suite for Educationを使っています。それで生徒同士が、ディスカッションしながら共同研究もできる。

 以前なら、イベントなどの告知はポスターを職員室の廊下や教室の壁に貼り、先生がホームルームで伝えていました。ところがネットで情報を流すと、参加率がものすごく上がった。全生徒に流せますし、ついでに保護者にも流してしまいます。深掘りして生徒に学んでもらいたいものはURLだけを送る。生徒はそれをクリックして、動画で見ることができる。これはすごい強みです。

 学校で契約すると安くなるというので、全生徒が自由にAdobeのソフトを使えるようにしました。生徒会の中にある「総合技術研究所」がPR用の動画を作ったりしている。個人契約だと動画編集ができるものまで入れると年に3万いくらかかかると。それが年に1人あたり1000円もかからなくなった。教職員も入れて300弱の申し込みがありました。

――生徒全員に端末としてChromebookを配っていますね。

工藤 すべての生徒と保護者に対して学校としてアドレスを配布しましたので、「生徒及び保護者の皆さんへ」と書いて一瞬にして連絡がつくわけです。

 Chromebookは動画編集にはスペック不足ということで、もっと性能のいい機材を中1から高1までの生徒が申し込んだことで、一気に200人以上の生徒が動画を作れる環境にあります。これってすごいことだと思います。

 日本は、安全神話だとか品質神話が強すぎて、事故やミスが起きないように考えてしまう。でも、何かをクリエイトしていく場合、それではダメ。創造しつつ、失敗を修正していくやり方に変えていかないと、新しいものはできません。日本の産業が衰えた理由の一つに、品質だけを考えすぎ、ディテールにこだわりすぎて、そしてガラパゴス化してしまったことがあると思います。

 ある部分、走りながら変えていくことを、教育の場でも取り入れなくてはいけません。生徒は多少失敗してもやりながら変えていけばいい、と私は思うし、先生もしょっちゅう間違えているよね、と言います。