学年の壁を越えて、生徒同士が語り合う春の修養会全体会の様子 写真提供:女子学院中学校・高等学校

鵜崎創(うざき・はじめ)
学校法人女子学院院長、女子学院中学校・高等学校校長

*「崎」は正しくは「たつさき」、以下同

1964年東京生まれ。国際基督教大学卒業後、旭化成に勤務。89年、テネシー明治学院高等部の設立に理科教員として参加。恵泉女学園中学・高等学校副校長を経て、2016年より現職。

 

女子学院生の「入り口」と「出口」

――女子学院には学校行事がたくさんありますね。

鵜崎 この3月に、生徒同士の話し合いを中心にする行事である春の修養会がありました。希望者のみの参加ですが、中1から高3まで、各学年から2ケタ以上、全体で100人を超える生徒が集まりました。この2年間は、新型コロナ禍の影響により、宿泊せずに通いで行われました。3日間、代々木にある国立オリンピック記念青少年総合センターで、講師の先生からお話を聞いて、それを元にいろいろな話し合いを生徒同士で行います。

――面白いですよね、そういうディスカッションは。

鵜崎 生徒は大好きです。レクリエーションがなくても、話し合いの場が持てると喜んで参加しますね。春の修養会は、中1から高3まで学年の壁を取り払って行われるのが特徴です。100人以上の生徒たちが二重三重に囲む全体会では、中1生も手を挙げて、「私はこう思うのですけど」と発言していました。

 教員は横で聞いています。この修養会にも委員がいて、話が散らかってしまわないように、どういう趣旨で全体会を進めるかなどを考え、テーマを切り替えながらリードしてくれています。

――それは非常にユニークな行事です。参加しない生徒もいるわけですか。

鵜崎 春休みにはクラブ活動もあります。中にはクラブ活動を休んで参加する生徒もいますが、みんなが修養会に参加できるわけではありません。5月には、文化系各クラブの春の公演があるので、春休みもその準備などで登校してくる生徒が多くいます。また、4月には体育祭もあります。

[聞き手] 森上展安(もりがみ・のぶやす) 森上教育研究所代表。1953年岡山生まれ。早稲田大学法学部卒。学習塾「ぶQ」の塾長を経て、1988年森上教育研究所を設立。40年にわたり中学受験を見つめてきた第一人者。父母向けセミナー「わが子が伸びる親の『技』研究会」を主宰している。

――以前は、東京体育館で体育祭をやっていたように記憶していますが。

鵜崎 その頃は多くの保護者に来ていただくこともできました。一方で、外の施設を借りることには不便な面もありました。校内でやる分には用具の運搬も不要で、日程の延期もできますし、ということで元に戻っています。校庭でやるときには見学者の人数を制限せざるを得ないので、現在は高3の保護者しかお招きしていません。

――どうしても狭いというのはありますね。

鵜崎 生徒の一体感はあるのですが、コロナになってからちょっと困っています。競技種目を削り、高校生が校庭でやっている間、中学生は教室や体育館で控えている、といった工夫をしながら行っています。

――昔から生徒による自主運営を掲げていますね。

鵜崎 そうですね。高2が幹部学年になり、実行委員会の委員長を務めます。また、各クラブの部長も担うなど一番忙しいので、高2には宿泊行事はありません。修学旅行は高3の4月に行きます。

――共同生活を送るような宿泊を伴う学校行事は伝統校の強みだと思います。これは面白いなあと思ったのが、先ほど触れた学校紹介の動画でも取り上げられていた、7月に行われる中2の「ごてんば教室」と高3の「修養会」でした。

鵜崎 その学年全員が泊まり込みで話し合う行事です。女子学院生にとって、初めて行われるごてんば教室が「入り口」、最後に行われる高3の修養会が「出口」と呼ばれています。