青木 徹(あおき・とおる)
学校法人開智学園理事長
1947年東京生まれ。東京学芸大学卒業後、音楽科教員として都内の公立中学校に勤務。96年埼玉第一高等学校(現・開智高等学校/さいたま市岩槻区)の学校法人理事となり、翌97年開智中学校(中高一貫部)開校。開智国際大学学長を兼ね、2022年から埼玉県私立中学高等学校協会会長も務める。
埼玉から県境を越えて茨城へ
――開智中学校を1997年に設立して小学校も開校、12年間の一貫教育体制を整えました。そして2011年には開智未来の中高を設けています。3校目の開智望はなぜ県境を越えたのでしょう。
青木 最初のきっかけは、つくば市が「私立の小学校をつくりたい」と言ってきたことです。開智未来が開校し、2004年には開智小学校もできていました。中高も一緒につくれるならいいかなと、副市長にお話を伺いに行きました。つくばエクスプレスも05年に開業しており、国が特区として直接関与していたので、新しい学校ができるかもしれないと。
ところが、つくば市には畑はいっぱいあるものの、廉価で学校に向いている土地がありませんでした。
――立地の問題でしょうか。研究学園駅前への移転が決まった茗渓学園(1979年開校)に中高はありますが、小学校はありませんね。
青木 こうした経緯の中で、当時の会田真一・守谷市長とお会いしました。会いに行くと、「学校用地はここと、ここと、ここがあるけど、どこがいい?」と聞いてくる(笑)。その中の一つが関東鉄道常総線「新守谷」駅前ですから、それはそこがいいに決まっています。この土地の半分以上はつくばみらい市でしたが、市長は「つくばみらい市と一緒にやるから」と言ってくれました。
――それは素晴らしい立地です。守谷市の市長は私立校へのニーズをくんでいたのですね。
青木 人口も増えますし、町づくりの一環として活性化すると。ただ、県との関係では時間がかかりました。条件として、「他ではやっていないような特色のある教育で新しい需要を喚起するなら」ということで、「国際バカロレア(IB)をやります」と答えました。
うちの教育は元々、IBにはシンパシーがあります。進学校は皆そうでしょうが、生徒の主体性を重視するという点がそうです。探究型学習は、開智小学校では最初から導入していましたし、授業評価を小学生にもやらせていました。
IBとは似ているところがたくさんあったので、これだったらいままでの延長線上でできるなと思いました。県との話し合いなどで時間がかかりましたが、開智望小学校は15年に開校、18年にはIBのPYP(Primary Years Program)認定を受けました。そして、開智望小の卒業生が接続する先として、20年に開智望中等教育学校が開校します。
――IBに合わせた5―5―2制の12年一貫教育となるわけですね。
青木 うちの特徴として、日本の学習指導要領とIBの教育プログラムを融合させた独自の教育課程を設けているので。
――小中高一貫体制がこの春開校の開智所沢でも受け継がれました。ところで開智望小学校を設立した頃、東京でも別の動きもありましたね。