規律ある自由を謳歌する「桐朋中・高」生徒の進む道サッカーやテニスもできる広いグラウンド。野球場も別にある

桐朋といえば、「規律ある自由」な校風で知られる。戦前は軍人の子弟を預かる学校だったこともあり、戦後、その存続も危ぶまれた。東京文理科大(現・筑波大)学長から転じた務台理作校長の下で学校文化の基礎が育まれ、現在につながっている。(ダイヤモンド社教育情報、撮影/平野晋子)

規律ある自由を謳歌する「桐朋中・高」生徒の進む道
原口大助(はらぐち・だいすけ)

学校法人桐朋学園男子部桐朋中学校・高等学校校長

 

東京都八王子市出身。桐朋中学校・桐朋高等学校、京都大学文学部国語国文学科卒業後、1989年、桐朋中学校・高等学校に着任。担当教科は国語。クラブ顧問は野球部を担当。中学生活指導部主任、高校部長、校長補佐を経て、2021年4月、第11代校長に就任。併設する桐朋学園小学校の校長も兼任。

 

 

伸び伸びとした自由な校風

――武蔵の教頭の加藤先生も桐朋のご出身でしたね。本校のOBの方に会うと、伸び伸びとしていながら真面目な方が多い印象です。卒業生の進路はいかがでしょう。

原口 学問の世界や医師、政治家としてご活躍の方も多いですし、俳優では西島秀俊さんも卒業生ですね。紅白歌合戦に出た純烈のメンバーの1人もそうですし、アメリカでスタンダップコメディアンをしていたり、料理の世界で頑張っていたりと、実に多種多様です。

――大学実績を見ると、2022年は早慶の合格者数が増えていましたね。

原口 生徒の志望を応援するのが本校の方針です。7人に1人が医学部医学科志望という年もあります。

――仕事も多様化していますし、進路指導というのは難しいですね。

原口 興味関心を広く持つことで社会や状況の変化にも対応できる、そうしたたくましさが期待されていると思います。先ほどお話ししたシジュウカラの研究をしている卒業生が話してくれたこととして、桐朋の自由な環境を生かしてで自分で切り開いていく姿勢、そういう気質をこの学校で身につけたと。最初のうちは、「シジュウカラが言葉をしゃべっている」などというと、学問の世界でも変人扱いされることもあったようですが。

――桐朋独自の行事というのはありますか。

原口 取材依頼があり、改めて「これは、取り組み方が珍しい行事なのか」と思ったのが「クラスの日」です。もう50年以上続いていますが、使える費用の上限だけが決まっていて、行先や行程は生徒が好きに決める行事です。生徒にとって取り組みがいがあり、人気があります。

――先生方は引率するだけなのですね。

原口 基本的にはそうですね。一つのクラスに2人ずつ付きます。

――上限額はどのくらいですか。

原口 2日分で1万9000円です。過去には学校に泊まったクラスもあったようです。宿泊せずに2日に分けても構いません。温泉に行ったり、バンガローに泊まったり。

――面白そうですね。ユニークなものでは何がありましたか。

原口 男子校らしいということでは、鬼ごっことか(笑)。どろけー(泥棒と警察)をするため、ただ広っぱに行くというのもありました。

――安くていいですね(笑)。

原口 半日くらい走り回っていました。そういうクラスはちょっと高めの温泉旅館に。バンガローみたいなところで宿代は安くして、アスレティックで楽しんだクラスもありました。中1と中2で行っているので、中1で実際にやってみて、思うような行事にできなかったら中2で取り戻そうと頑張ります(笑)。クラス替えはありますが、最近はその担当委員の希望者が多くて取り合いになっています。

 教員としては、何とか博物館とかを日程に入れられないかと考えるのですが、なかなかそういうものは通りません(笑)。教員が生徒の賛同を勝ち取り、手術の見学を組み込んだケースもありました。

――先生が思うようにはいかないわけですね。

原口 食事代は安く済ませようと、観光バスで途中スーパーに立ち寄り食材を購入して、調理をしたものの失敗、カップラーメンで済ませたということもありましたね。こうした失敗も含めて経験できる自由度が「クラスの日」の魅力だと思います。

規律ある自由を謳歌する「桐朋中・高」生徒の進む道クラスごとに生徒が話し合って何をするか決める「クラスの日」 写真提供:桐朋中学校・高等学校
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