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冨山和彦
とやま・かずひこ●日本共創プラットフォーム代表取締役会長
1960年生まれ。筑波大学附属駒場中学校・高等学校から東京大学法学部卒業、スタンフォード大学経営学修士(MBA)取得、司法試験合格。ボストン コンサルティング グループ、産業再生機構COO (最高執行責任者)を経て、2007年に経営共創基盤(IGPI)を設立。2020年投資・事業経営会社の日本共創プラットフォーム(JPiX)を設立。

 ここで強調したいのは、偏差値自体が障害なのではないという点です。偏差値とは突き詰めれば基礎言語能力の高さを示すものであり、それ自体は必要条件として否定しません。ただ、それだけで飯が食える時代ではない、という認識が決定的に重要なのです。

――大学入試のあり方も変わるべきでしょうか。

 もちろんです。ペーパーテストの点数だけで合否を決める仕組みが続く限り、どうしても偏差値型の教育になってしまう。理想は、AIを使った入試科目を導入することです。

 どういうことか。あえて正解のない社会的な問いを出題し、AIを使いながらそれに対峙させる。そして最終的な回答だけでなく、どういう問いを立て、どういうプロセスで考えたかを、その過程ごと提出させる。そうすれば、その人の本質的な能力が丸見えになります。思考の質が、そのまま出てしまうのです。

 こうした入試改革を東大が先陣を切って行えば、他の大学も追随します。そしてそれが中学・高校の教育課程を変えていく。正解なき問いにどう対峙するかを考えざるを得なくなる。探究型学習が、真の意味で機能し始めるのです。

ホワイトカラーサラリーマンは
最もきつい道になる

──こうした時代の変化を、親世代がしっかり知っておく必要がありますね。

 まさに親御さんにぜひ知っていただきたい現実があります。

 今、工業高校を卒業する段階で、生徒1人に平均して30社以上からの求人があります。入学時は全入に近い状況であるにもかかわらず、です。これが今の世の中を雄弁に語っています。

 医学部に優秀な女子学生が集中している現象も同じ文脈です。医師は世界の労働経済学の定義ではノンデスクワーカーです。職能大学としての医学部が人気を集めているのは、学生たちが本能的に「職能こそが価値を生む」と感じているからでしょう。

 この構図は今後ますます広がっていきます。有名大学の文系からホワイトカラーサラリーマンという王道は、最もきつい道になっていく。逆に、現場・技能・対人能力という世界に早くから向かった人たちに、大きなチャンスが開かれています。