「日本を買い叩け!!」
こんなセンセーショナルなキャッチコピーで注目を集めている映画「ハゲタカ」の公開が、いよいよ来る6月6日(土)に迫っている。
中国の国家ファンドをバックに付けた“赤いハゲタカ”劉一華(リュウ・イーファ)が、日本の大企業・アカマ自動車へ突然TOBを仕掛ける。“伝説のハゲタカ”鷲津政彦は、かつての盟友でアカマ自動車の役員・芝野健夫に請われ、ホワイトナイトとして再び買収合戦に名乗りを上げる――。
これは、言うまでもなく単なる映画のストーリーに過ぎない。だが、新興国、とりわけ中国の国家ファンドは、今や映画のテーマに採用されるほど注目される存在になりつつあるのだ。
しかし実際のところ、その全貌は今なお“謎のベール”に包まれている。そこで今回は、新興国の中でも存在感を増しつつある「中国の国家ファンド」の知られざる実態に迫ってみよう。
投資手法は「ファンド・オブ・ファンズ」
顔が見えにくい中国の国家ファンド
まず、一口に「ファンド」と言っても、民間のプライベートエクィティ(PE)ファンドと国家ファンドは、実はかなり性格が違う。まず、国家ファンドの最大の特徴は、多くの場合、設立の趣旨が一般的なイメージのファンドと異なることだ。
たとえば、PEファンド、特にバイ・アウト・ファンドは、会社の支配権を押さえることにより、自ら、または自らが推薦する経営陣が主体的(ハンズ・オン)に企業価値の向上を目指すというスタンスを取っている。
ファンドマネジャーは、他人の資金を自らの投資方針で運用し、金融的リターンの最大化を目指す。
それに対して国家による投資は、他人の資金を預かって運用するわけではない。実は、便宜上(1)国家ファンド、(2)国営企業、(3) 国営企業の一部門、(4) 投資子会社などの形態をとっているだけだ。
その理由は、国家の莫大な資金を運用するため、そもそもファンド組成時に資金調達をする必要がないから。運用についても国家自らが選んだファンドマネジャーで運営するため、投資家と運用者は事実上同じである。
自分の資金を自分で運用・投資することを「プリンシパル(自己勘定)投資」と言うが、投資資金を持つ者を「投資家」と定義するなら、国家ファンドの実態は「国家資産を原資とするプリンシパル投資機関」と言える。つまり、「投資家」あるいは「投資機関」そのものに他ならないのだ。