部下の才能を潰していないか?

 「最近の社員は個性がなくなりましたな。困ったことに言われたことしかできないマニュアル型社員がどんどん増えているんですよ」

 私がクライアント企業を訪れると、聴こえてくるのは部下に対する不満の声ばかりです。

 しかし、従業員の労働心理を研究したヴァン・ファンジェは、『創造性の開発』という著書の中で次のように述べています。

 「人間には、もともと創造性が備わっている。それが十分に開発できないのは、何らかの障害で創造性が押さえ込まれているからだ。その障害を取り除けば、創造性はおのずと発揮される」

 誰もが本来持っている「創造性」という力が、私たちの社会に進歩をもたらし、企業が発展するための原動力となっています。そして、一人ひとりの創造性の違いが、その人の「個性」をつくり上げていきます。健全な環境の下では、個性豊かで、創造性に富んだ人間が育っていくというのがファンジェの主張です。

 ところが、なぜ多くの上司はマニュアル型社員が増えていると感じるのでしょうか。ファンジェの言葉を借りれば、いま企業では社員の「創造性」を押さえ込む何らかの「障害」が発生しているようです。社員の創造性を、何かがむしばんでいるのです。

 それは、果たして何なのでしょうか?

 ファンジェは、この「障害」について、大きく三つの要因が考えられると言っています。

(1)権威による圧力
(2)劣等感
(3)しらけ

 立場が上の人間からの、権威による圧力。

 「いいから俺の言う通りにやれよ。地方に飛ばすぞ」

 劣等感を植え付けるような評価。

 「おまえは本当にダメなやつだな。いつまでたっても、できないじゃないか」

 やる気を削ぐような、無責任な発言。

 「無駄無駄。いくら頑張ったって、どうせ何も変わらないよ」

 そんな言葉が、個性豊かな社員を押さえつけています。