
京野友香
最終回
仕事柄、自分が仕える上司のことを心底尊敬できないと秘書という仕事は務まらない。秘書たちが「こんな上司に仕えたい」「こんな上司は絶対イヤ」と思っているのか? 秘書同士の食事会で本音が浮き彫りに。秘書たちのイニシャルトークがはじまった。「どうしてN(取締役)の秘書にはなりたくないの?」と私。「だってものすごくエラぶっていて、横柄な感じがするんです。S(社長)に見せる態度と社員に見せる態度が極端に違うじゃないですか。エラそうにしているわりには、イザというときには責任をとらずに、Sに言い訳ばかりしているところも、どうしても尊敬できないんです」と新人秘書Y。

第11回
「40歳を過ぎたら顔に責任をもて」とか「顔には人生が刻み込まれる」などとよく言われるが、そのとおりかもしれない。人相が第一印象の良し悪しはもちろん、その人の生きる姿勢まで伝えてしまうものである。

第10回
一時期、新しい事業で会社を急成長させて、時代の寵児ともてはやされたW社のE社長。昔からE社長と親しくしていたT氏から聞いた話だ。あるときT氏がW社を訪れたときのこと。エレベータでE社長と偶然乗り合わせたT氏は、昔からの調子でE社長に声をかけたそうだ。「やあ、Eさん。元気ですか」すると、まさに時の人として脚光を浴びていたE社長は、T氏を歯牙にもかけないという態度で、挨拶もせずにフンと横を向いてしまったという。そのときT氏は、寂しい気分になったと同時に、きっとこの会社はおかしくなる、そう思ったらしい。 このように自分が偉くなるとつきあう人を選び、古くからの知人と接する態度まで変えてしまう人が結構いる。しかし本当に徳がある人というのは、決してそんなことはしない。昔からの関係もとても大切にしているものである。

第9回
意味のない団体の年会費、過剰な接待やタクシーチケット、定年後「顧問」して居座る役員など、企業には「一体何のため?」と思える不合理なことが多い。こうした今ひとつ納得しがたい出来事の数々について、私はあるときボスに聞いてみた。するとボスは、「君が考えるように、何もかも合理的に、とはいかないこともあるんだよ」「それをいちいち批判して、排斥しようとムキになることが、結果として、自分の世界を狭めてしまうことになる。君も清濁を併せ呑める人間になりなさい」と私に言った。うつむく私を見て、ボスはニヤリと笑ってつけ加えた。「でも、どんなことでも、あきらめて受け入れるということでは決してないよ」と。

第8回
何を提案しても、「売上げは?」「費用対効果は?」を繰り返し、新しいことに挑戦させてくれない「守り型上司」はどの会社にもいる。そんな上司が増えれば、若手社員は夢を奪われ、会社も活力を失ってしまう。

第7回
株主総会が終わり、新経営体制が発表になった当日。新役員たちに向けて事務的な1通のメールを発信した。それは私が秘書課に異動になって間もなくのことだった。そのメールを見たH取締役から、モノスゴイ剣幕で電話がかかってきた。 「今メールもらったけどね、あの宛先名の順序、間違っているよっ」 「宛先の順序、ですか?」 「そうだよ! ちゃんと序列順にしなくちゃあ。今日から新しい順番なんだから。T取締役は私の前じゃなくて後ろだろう!」 「申し訳ございません。大変失礼いたしました。以後気をつけます」しかし、ふと考えてみると、取締役という重責や業務内容の深さと比較すると、H取締役の言動はあまりにもミスマッチで、違和感を覚えたのはなぜだろうか。そんなこと気にしなくたって、エライ立場の人だってわかっているのに…。

第6回
みんなから嫌われているのにまったく気づかない「裸の王様」状態の上司がいる。そういう人に限って、なぜか自信たっぷり。まわりの社交辞令を鵜呑みにし、いつも自分がキーマンだと勘違いしていることが多い。

第5回
「社長と知り合いである」ことを言いふらし、横柄な態度をとる人が結構いる。しかしその“知り合い”が意外とクセもの。肝心の社長に尋ねてみると、「誰それ?」という答えが返ってくることも多い。たとえばC社のTさん。彼は、我がボスの知人の紹介により、我が社との新しい取り組みがはじまったばかり。だから正確には、ボスはTさんとは直接の知り合いではないのだが、どうやらTさんはボスと知り合いであると言いふらし、我が社の社員たちに対して高圧的な態度をとっているという。

第4回
私が秘書課に異動して間もなく、何か情報を聞き出そうとする人やボスの耳に情報を入れようとする人から幾度となくアプローチを受けるようになった。秘書という立場の私を利用しようと急接近してきたのである。

第3回
私が秘書をしてきて感じるのは、機密情報でさえも口外してしまう「口の軽い人」が非常に多いということだ。そういう行為は、長年培った信用と立場を一瞬にして失ってしまうという「命とり」にもなりかねない。

第2回
企業にとって大切なのは「お客様第一」であること。「お客様よりも自分を優先してほしい」なんて望んでいる社長はいないはずである。にも関わらず、自社のトップの顔色ばかり気にしてしまう人を私はよく見かける。

第1回
気楽なOLだった私が、突然の人事発令で社長秘書に。秘書課に配属されたその日から、まわりの様子がガラリと変わった。なぜだ? 私自身はまったく何も変わっていないのに。間違いなく周囲の態度は一変したのだ。
