井上哲也
2年目を迎えたトランプ政権の経済政策は財政赤字の動向が焦点になる。80年代の「双子の赤字」の再来となる可能性は少ないにしても、朝鮮半島有事や移民規制、保護主義政策など、トランプ大統領が打つ手次第で財政や貿易収支の振れ幅が大きくなり世界経済が不安定化するリスクはある。

経済が堅調な中で就任する米FRBのパウエル新議長だが、景気拡大が長引けば緩和的な金融環境維持を求める大統領と衝突する恐れがあり、逆に景気後退となれば量的緩和策に懐疑的な与党共和党と対立しかねない。難しい舵取りが予想される。

次のFRB(米連邦準備制度理事会)議長人事が混沌として来た。再任の可能性も噂されたイエレン議長ら有力視された2人の候補の可能性が急低下したのは、トランプ大統領が求める政策とは違う立場だったからのようだ。大統領の介入の下で最適な人選ができるのか、米国の識見が試される。

「金融正常化」を進める米国FRBだが、足元の物価の上昇は鈍化している。それでも引き締めを急ぐ背景には、家計への与信の急拡大を懸念し始めている可能性がある。放置すればローンが不良化し金融システム不安になりかねないだけに、出口戦略は難しい舵取りだ。

10年近く続けられてきた金融緩和策の縮小に向けた「出口戦略」の議論が始まったが、利上げに転じた米国も含め「インフレ目標」は実際にはまだ達成されていない。目標実現前から手じまいを始める以上、市場に対してきちんとした説明が必要だろう。そうでなければ、次の景気後退の際には、政策の効果が弱まる。

金融政策の決定はルールにのっとってやるのか、合議制でするのか。日米欧の金融当局が、超金融緩和の「出口」を探るなか、一足先に追加利上げに踏み切った米国で、FRBと与党共和党の間で金融政策をめぐるもう一つの議論が展開されている。リーマンショック後、FRBが大手金融機関の救済や大規模な量的緩和を展開したことの是非を巡る議論も背景にある。
