古巣である渋谷教育学園幕張では米アイビーリーグにも合格者が
日本一の中高一貫共学校である渋谷教育学園幕張(渋幕)のすごいところは、東京大学をはじめとする最難関国立大学だけはなく、海外の超一流大学への直接進学も実現しているところにある。渋幕のすべてを知る男が、東京多摩地区から世界に羽ばたく生徒を応援する。(ダイヤモンド社教育情報、撮影/平野晋子)
井上一紀(いのうえ・かずのり)
明星中学校・高等学校・明星Institution中等教育部校長

1956年東京生まれ。成蹊大学法学部卒業後、一般企業勤務をへて、82年に渋谷教育学園幕張高等学校(86年から中学校も併設)の開校準備室に。83年の高校開校後は社会科教員となる。90年から渋谷幕張シンガポール校の立ち上げに参画、教頭を長く務める。2005年に早稲田大学系属早稲田渋谷シンガポール校1期生の卒業のタイミングで帰国。渋谷教育学園幕張中学校・高等学校の進路部長を務め、19年から校長補佐も兼務。25年より現職。
帰国生が1割を占める「渋幕」のように
――渋谷教育学園幕張(渋幕)では帰国生(帰国子女)を熱心に集めていましたね。
井上 2期生から帰国生が入ってきました。異文化の中で育ってきたこともあって、とても個性的で感性が違う。一般生に与える影響など面白い。今では全校生徒の1割ほどを帰国生が占めています。帰国生はネイティブ教員がすべての英語の授業を受け持ちます。
とはいえ、海外経験のある一般生も一定数います。その昔、中3で英検1級を取るような子もいましたが、海外での生活経験はあったものの、東大に行きたいので帰国生クラスに行く気はないとはっきり言っていました。この生徒は実際に東大に進学しました。
――2026年に開設する明星Institution中等教育部(MI)でも、帰国生とインターナショナルスクールなど出身の国際生を各5人、合計10人募集しますね。渋幕での経験を元に取り組まれるのでしょうか。
井上 グローバル生の英語については特別なカリキュラムで考えています。国際人としての意識を持つために、国際教育を行っていくうえで、帰国生や国際生、留学生の受け入れや海外との文化的な交流などさまざまなプログラムを用意して環境づくりをすることが不可欠です。
渋幕の田村哲夫校長(現・学園長)は、世界の動きを見て新しいことを次々と取り入れ、海外に姉妹校をつくって交換留学を行い、グローバルプログラムを充実させていかれました。
――渋幕では具体的にはどのようなものを。
井上 ユネスコ・スクールへの参加や、国際的に活躍できるグローバル・リーダーを高校段階から育成することを目的に2014年に始まったスーパーグローバルハイスクール(SGH)には、最初の56校の1つとして指定されました。18年にはその仕上げとして、シンガポールのRaffles Institutionの提案で、世界の先進校と共に立ち上げたグローバルリーグをベースにして、「水」をテーマとした世界高校生会議を開催しました。これは一学園の企画するイベントとしては卓越したものであったと思います。
参加者が一国の大使となって、国際機関などで行われている会議と同じように議論や交渉、決議の採択といった活動を通して学ぶ「模擬国連」では、毎年日本の大会で優秀な成績を収めて、ニューヨークの国連本部で行われる高校模擬国連国際大会へ参加しています。
――模擬国連はよく話題になりますね。海外大学への直接進学も渋幕の特徴の一つです。
井上 アメリカ東海岸のアイビーリーグなどの名門校に渋幕から初めて合格者が出たのは、確か、私がまだ渋谷幕張シンガポール校にいた、1990年代の初めころだったでしょうか。その後、バブル経済の崩壊があり、経済のグローバル化が進みますが、まずは日本の大学に進み、チャンスがあれば海外大学に留学しようという流れでした。今は、その時代とは異なり、初めから海外大学を目指すような生徒が増えてきました。
――時間がかかるものですね。その取り組みについては後ほど改めて触れたいと思いますが、その前にシンガポールでのご経験について伺いたいと思います。







