尾形聡彦
6月12日に開催された史上初の米朝首脳会談をめぐっては、「中身がなかった」といった批判がもっぱらだ。しかし、会談前後の両国の動きを見ていると、実はすでに段階的な非核化が始まっていると見ることができるのだ。

米トランプ政権が4月13日、英国、フランスとともにシリア攻撃に踏み切った。シリアのアサド大統領を「怪物(モンスター)」と呼んだトランプ大統領の言葉とは裏腹に、攻撃は小規模な中身だった。その背景には何があったのか。

トランプ大統領が、自分と気が合い、忠誠心も高い人物たちで側近で固めている。特に、テレビに出ているコメンテーターたちを集めているのが特徴だ。諫言する部下を一掃、強硬派ばかりを周辺に集めるトランプ政権は、不安定さを増している。

トランプ米大統領が、エルサレムをイスラエルの首都と承認宣言したことが、世界を揺さぶっている。背景にあるのは、自身の支持基盤のことだけを考えた「自分ファースト」だった。

米トランプ大統領が11月5日の日本訪問を皮切りに、アジア歴訪の旅に出る。12日間の日程は、米大統領として最長だ。焦点は北朝鮮に対する軍事行動。首脳間で腹の探り合いが行われるものと見られている。

核・ミサイル開発を続ける北朝鮮に対し、米国は軍事行動をとれないとの見方が多いが、そう決めつけるのは危ない。トランプ大統領は軍事行動に積極的な考えを持ち続けており、政権内では、トランプ一家に代わるように、旧軍人らの影響力が増している。軍事オプションの可能性は捨てきれない。

「ロシア疑惑」で新たに長男や娘婿のクシュナー上席顧問がロシア側と接触していた事実が発覚。窮地に立つトランプ大統領が国内の批判をかわすため対外強硬路線に踏み出す可能性が懸念される。

8日行われた米上院でのコミー前FBI長官の「証言」は、トランプ大統領のロシア疑惑捜査への苛立ちと「司法妨害」を疑わせるのに十分な内容だった。捜査はまだ初期段階だが、トランプ政権には大きな打撃となり、大統領弾劾が現実味を帯びる。
