
市川雅浩
ドル円相場は日米金利差縮小などで秋以降、ドル安円高に進む公算が大きいが、対外収支の構造変化で円は供給超過になりつつある。デジタル赤字拡大や新NISA(少額投資非課税制度)という新たな円安要因もあり、円安基調が変わるには国内への投資呼び込みや競争力強化など中長期的な収支構造の変革が必要だ。

日本銀行の追加利上げを機にドル円相場は一時141円台まで円高が進み、7月初旬の円安加速から約1カ月間で20円の円高への反転だ。9月には米国の利下げ開始が見込まれ、株価急落もあって不透明感が強まる。ドル円相場の今後を三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩シニアストラテジストが分析した。

ドル円相場は、FRB(米連邦準備制度理事会)が9月に利下げに転じる一方で日本銀行が10月に追加利上げをしてドル安・円高に転換するのがメインシナリオだが、4~6月期は米国の雇用と物価の伸びの鈍化動向や日米の金融政策を巡る思惑が主導する展開が続く。ただし1ドル155~160円で円買い介入の警戒感が強まるだろう。

日本銀行は「基準比率」引き上げでマイナス金利が適用される政策金利残高を抑えてきた。だがマイナス金利の深掘りが行われればイールドカーブが下方シフトし、銀行の収益を一段と圧迫する恐れがある。
