
末吉孝行
高校無償化などで野党の要求を入れて成立した2025年度予算は、国会修正による国債追加発行はなかったものの、歳入は一時的な税外収入に依存、26年度に決まっている高校無償化拡大などの要因を勘案すると、実際の財政負担増は1兆円になる。今後、トランプ関税の影響への対応での財政支出増も予想され、「26年度PB黒字化」は不透明だ。

地方創生は「脱東京一極集中」と表裏で実現には東京圏への人口流入増を止める必要がある。それには東京圏と地方の労働生産性と所得の格差を縮めることが鍵になり、地方の非製造業の生産性向上や交付金の低所得市町村への重点給付などで今後10年に実質GDPを14%増やすことは可能だ。

石破新政権の財政運営の当面の焦点は経済対策を盛り込む2024年度補正予算の規模が4兆~5兆円で収まるかどうかだが、ほかにも政府が目標に掲げる「25年度のPB黒字化」達成には、25年度に防衛増税が実施できるかどうかなど高いハードルがある。25年度の財政健全化は先送りの可能性が高い。

2024年の公的年金の財政検証を予想すると「モデル年金」の受給額の所得代替率は57.4%と、前回検証から大幅に上昇する。円安や株高で積立金が約100兆円上振れしたことが大きい。だが積立金が少ない国民年金はマクロ経済スライドの影響もあって代替率低下は続く見通しだ。

巨額の政府債務のもと金融政策の正常化が進めば、財政は金利が2~3%に上昇すれば持続性が危うくなる。利払い費の増加が社会保障費増を上回るのに加えて、防衛や少子化対策での歳出増を考えると、超低金利政策で弛緩した財政規律を立て直すことは喫緊の課題だ。
