5年に一回の財政検証
将来の所得代替率はどうなるか
2024年は、5年に一回の公的年金の財政検証の重要な年だ。
「公的年金の定期健康診断」とも呼ばれ、制度がおおむね100年後も維持可能であるかどうかについて、さまざまな前提の下で試算される。
とりわけ注目されるのが「モデル年金」の「所得代替率」だ。夫が平均賃金で40年間働いた会社員、妻が40年間第3号被保険者(専業主婦)である世帯が受給する新規裁定時(受給開始時)の年金の受給額と、現役世代の平均手取り収入額との比率を指す。
所得代替率は現役世代と比べた年金生活者の相対的な豊かさを示すものであり、大幅に低下することは望ましくない。仮に所得代替率が50%を下回ることが見込まれる場合には、政府は給付と負担の在り方について検討を行い、所要の措置を講ずることとされている。
大和総研の独自モデルで行った試算によると、24年財政検証の所得代替率は57.4%と、前回検証の50.8%から大幅に上昇する見込みだ。年金の持続性は5年前より高まったことが示唆される。
厚生年金の加入者拡大の制度改定はあったが、積立金額が運用収入増加で約100兆円、前回検証時から上振れするなど、円安や株高が追い風になった。
だが、少子高齢化や実質賃金の停滞といった「構造」の脆弱(ぜいじゃく)性は変わっていない。