26年度の日本のPB赤字「1.2兆円」!?政府の“黒字化”中長期試算を翻す6つの要因Photo:PIXTA

26年度「PB黒字3.6兆円」
政府の財政中長期試算は本当か!?

 内閣府が8月に公表した直近の「中長期の経済財政に関する試算」(中長期試算)では、国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)は2026年度に3.6兆円程度の黒字と見込まれている。

 だが、高校無償化、子育て支援の歳出や防衛費では具体的に決まっていない財源が仮定されており、また、今後のガソリン税の旧暫定税率の廃止なども織り込まれていない。

 筆者の試算では、こうした要因や利上げによる日本銀行の納付金減少などを織り込むと、26年度もPBは1.2兆円の赤字になる見通しだ。

 昨年秋の衆院選挙に続き、7月の参議院選挙でも自民・公明の与党の議席は過半数を割り込んだ。少数与党体制の下で、予算や法案成立には野党の協力がいっそう必要になる。

 野党が参院選で掲げた公約には、消費税などの減税策がこぞって掲げられ、与党も相当額の給付金の支給を掲げて選挙を戦っており、財政規律への配慮は少ない。

 与党の弱体化や多党化の進展は、海外の先行研究でも財政規律の弛緩(しかん)や公的債務の増加につながりやすいことが知られている。

 主要国では突出した政府債務を抱える日本だが、財政健全化も進んでいない理由の一つには、社会保障政策の対象として高齢者に焦点が当たることが多く、現役世代の負担軽減は重視されてこなかったことがある。

 参院選でも、野党が消費減税を訴え、また「手取りを増やす」などを掲げた新興政党が躍進したことを考えると、低所得の勤労者世帯への再分配を強化し、財政が自らの生活の安全・安心に役立っているという信認を高め、財政が機能するためには財政健全化を進めることが重要なことを示していくことだ。