
少数与党で苦しい石破政権の財政運営
25年度予算でPB悪化、2036億円
野党の求めた高校無償化や「103万円の壁」見直しなどの歳出拡大や所得減税を部分的に受け入れる形で修正し成立した2025年度の一般会計当初予算は、中身を見ると、国債の追加発行はなく、表面的には国会修正による財政の悪化はなかったように見える。
しかし、歳入の多くは、一時的な税外収入で賄われ、歳出では予備費減額などで、結果的に高校無償化などの歳出増を上回る歳出減が図られた。
またやや技術的ではあるが、歳出減少の要因となった所得減税に伴う地方交付税交付金の減額は、国の一般会計と特別会計のやりとりで、一般会計の負担を特別会計が肩代わりしただけだ。
こうした要因を勘案すると、国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)は、25年度では2036億円、悪化する。また、税外収入がなくなり高校無償化が拡充される26年度以降では、PBがさらに悪化する可能性が高い。
政府は国・地方のPB黒字化を財政健全化目標としている。予算修正前の25年1月に内閣府が公表した「中長期の経済財政に関する試算」は26年度のPB黒字化を見込むが、少数与党である石破茂政権は、今後もさまざまな局面で、減税や歳出拡大を求める野党との妥協を迫られるだろう。
7月に参議院選挙を控える中で、米トランプ政権による高関税政策の日本経済への影響が懸念されることを考えると、トランプ関税次第では政府は積極的な財政出動に動くなどの対応を26年度も迫られるだろう。
「26年度PB黒字化」には早くも暗雲が垂れ込めている。