三牧聖子
ニューヨーク市長選での「民主社会主義者」マムダニ候補や2州の知事選での民主党の勝利は「富裕層による富裕層のための政治」を進めるトランプ政権への逆風の強まりを示す。だが、民主党内はリベラル派と現実路線の中道派で一枚岩ではなく、来年の中間選挙に向けトランプ政治への統一した対抗軸を出し党勢を回復できるかはなお不透明だ。

トランプ政権の消費者よりも製造業保護を重視する関税政策やDEI撤廃、研究機関や大学の予算や助成縮小などの科学技術軽視は中国・毛沢東時代の大躍進政策や文化大革命を彷彿させ、「MAGAマオイズム」といっていい。トランプ氏は、国民の生活レベル低下や人材流出で米国を衰退させたという最悪のレガシーを残す可能性がある。

ウクライナの停戦を巡る米ロ首脳の電話協議はエネルギー施設などへの攻撃停止が合意されたものの、完全な停戦や恒久的な和平への道筋は描けないままだ。なぜトランプ大統領はプーチン大統領にここまで宥和的なのか。トランプ氏の世界観や政治観、私的な書簡からもプーチン氏との「価値観の共有」が明らかだ。米ロ両大国の利害優先で停戦が図られる懸念は払拭できない。
