日本製紙グループ本社社長  芳賀義雄

 9月から紙の減産を始めた。主力商品である塗工紙の生産を徐々に減少させている。12月の減産量は特に多くて8.4万~8.5万トンで、通常の月に比べて約半分の生産だ。年内いっぱいは続ける予定だ。これだけの規模は過去に例がない。

 製紙業界は業界全体としての生産調整ができず、すぐ値崩れするといわれてきた。1トンでも紙を多く売りたい、シェアを伸ばしたいという企業が多く、過去には構造不況業種に指定されなければ設備廃棄をできないほどだったが、現在は各社が減産を進めており、秩序が構築されつつある。

 シェア至上主義は将来の需要の成長が見込める時代の戦略。紙は国内総生産(GDP)との連動性が高く、今後はせいぜい頭打ちか減少していく。

  価格を安くして量を追えば、業界全体が負のスパイラルにはまりかねない。製紙会社の経営者のマインドは大きく変わったのだろう。

 需要の先行きについては、まだ見通しが立たない。スーパーなどのチラシは一時期、30%以上減少していたが、客足が遠のいたことでチラシ復活の兆しもあると聞く。ただ景気は冷え込んでおり、来年1~3月にかけて減産を継続する可能性もありそうだ。

 国内の紙の値上げ、円高、中国での需要の減退などにより今後、輸入紙が増加する可能性もある。ただ品質、デリバリー体制、供給安定性などで日系メーカーに一日の長があり、すべての紙が輸入紙に代替されるようなことはないと踏んでいる。(談)

(聞き手:『週刊ダイヤモンド』編集部 野口達也)